【決断 ユニホームを脱いだ男たち1】阪神・西田 家族に「恩返しできた」ラスト二塁打

[ 2018年12月1日 10:00 ]

12球団合同トライアウトの1打席目、二塁打を放つ阪神・西田(撮影・岡田 丈靖)
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 平成最後のシーズンが終わり、プロ野球は新人を迎える一方で、今年も多くの選手がユニホームを脱ぐことになった。昨オフに続き、現役引退の「決断」に迫る。第1回は阪神・西田直斗内野手(25)――。

 “引退試合”と心に決めていた。11月13日、タマスタ筑後で行われた12球団合同トライアウト。阪神から戦力外通告を受けた西田は、歩んできた道のりを思い返し、打席にゆっくり歩を進めた。

 「両親、知り合い、友達…今まで支えてくれた人を呼びました。みんなに最後にユニホーム姿を見せたかったので」。現役続行への望みをつなぐというよりも、プロ7年間の感謝を示す場にするつもりだった。

 1打席目。直球を振り抜いた右中間への打球は、フェンス直撃の二塁打に。持ち味のバットコントロールを生かしての快音。「最後に1本出て、恩返しはできた気がします」と、納得できた。

 もっと多く、こんな光景を見せたかった。スタンドには父・正哉さんの姿があった。13年12月、突然、病に倒れてしばらくは車椅子での生活を余儀なくされた。「本当に死ぬと思って…倒れた時は、めっちゃ泣きました」。14年3月21日、1軍に昇格して出場したオリックスとのオープン戦を正哉さんが観戦。息子が打席に立った時、正哉さんは車椅子から立ち上がって声を張った。「直斗の時だけ立って見てもうたわ」。プレーで父を元気にする…。自分が何をすべきか再認識した。

 正哉さんはプロ入り時から、2軍戦に駆けつけ客席から打席の様子をビデオで撮影。野球を始めた頃から続く父の日課は、姉・侑香さんが引き継いだ。いつも家族が力を合わせて、サポートしてくれた。トライアウト後、ユニホームを着たまま、球場の外で待っていた家族の元へ向かった。

 正哉さんの目を見て「今までありがとう」と伝えた。「家では僕は静かで、しゃべらないんですけど、久しぶりにお父さんの顔を見てありがとうと言えた。お母さん(芽生さん)も、お父さんの世話で最近はほとんど球場に来られなかったので、久々に僕が打った姿を見たんじゃないですかね」

 1軍ではわずか2打席で無安打も「1軍もほとんど経験してないので、まだプロで…とかはなかった。すっきりした気持ち」と悔いはない。「ずっと2軍でしたけど、育成選手も、トライアウトも経験できた。いろんな人と出会えた。この経験を生かしたい」。今後は、野球とは別業界での挑戦も考えている。プロ野球人生で手にした“財産”は少なくない。 (遠藤 礼)

 ◆西田 直斗(にしだ・なおと)1993年(平5)4月26日生まれ、大阪府出身の25歳。大阪桐蔭から11年ドラフト3位で阪神入団。2年目の13年7月28日のDeNA戦(甲子園)に代打でプロ初出場。16年オフに育成選手契約となり、17年6月に支配下選手に復帰した。1メートル86、83キロ。右投げ左打ち。

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