野球は2死から 粘るDeNA打線の真骨頂

[ 2018年5月4日 10:20 ]

4月25日の広島戦の1回2死二塁、左越え2ランを放ったロペスは筒香に迎えられる
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 【宮入徹の記録の風景】簡単に諦めない。今季のDeNAは2者で2死無走者の場面から両リーグ最多の17点を挙げている。セ・リーグで2位以下のランクを出すと(2)広島、ヤクルト各12(4)阪神、巨人各10(6)中日7と続く。パ・リーグは(1)日本ハム15(2)ロッテ13(3)西武12(4)楽天10(5)オリックス6(6)ソフトバンク4となっている。

 DeNAは3日現在、チーム打率が・229でリーグ最下位。得点はリーグ5位の91点と出遅れ気味だ。それでも2死無走者から全得点の20%近く(18・7%)を記録しているのだから打線は粘り強い。4月11日の巨人戦(東京ドーム)では0―0の6回9番倉本、1番神里があっさり凡退。チャンスがついえたかと思われたが、2番大和が左前安打、3番筒香左越え本塁打で2点を先制した。2―3で迎えた8回は大和、筒香凡退の後、ロペスの中前打を口火に5者連続安打で一挙4点をマーク。6―3と全て2死無走者からの得点で巨人に逆転勝ちした。

 8回反撃の起点となったロペスは今季2死無走者の場面で13打数7安打(打率・538)、1本塁打。昨年も94打数33安打(・351)、8本塁打と相手投手の油断を許さない打撃でチームをけん引している。パ最多の15点を2死無走者から挙げている日本ハムは、中田がこの状況で7打数4安打(・571)、2本塁打と健闘。昨年は同じケースで43打数4安打(・093)と淡泊だったが、今季はしぶとくチャンスメークしている。

 また、現在右足ふくらはぎの故障で戦列を離れている近藤は、今季2死無走者で16打数9安打(・563)。昨年規定打席不足ながら打率・413と4割をマークし、今季も・392でリーグ1位と高い打撃技術は証明済み。集中力の切れやすい2死無走者で数字を上げるあたりに非凡さが伺える。

 話をDeNAに戻したい。といっても前身の大洋時代の出来事だ。72年6月21日に神宮球場で行われたヤクルト戦。0―2とリードを許した2回。大洋は先頭の松原誠が右飛、続く江藤慎一が投ゴロであっさり2死。次いで打席に立ったボイヤーの打球は右翼への飛球。三者凡退でチェンジとなるかと思われた。ところがヤクルトの右翼手・ロペスがこの打球を落し出塁。2死一塁となった。

 以下、個性派ぞろいのホエールズ打線が火を吹く。大橋勲右前打、米田慶三郎遊撃内野安打、近藤昭仁押し出し四球、江尻亮右前打、中塚政幸右前打、シピン中前打、松原右越え二塁打、江藤左越え本塁打、ボイヤー四球、大橋左越え本塁打と2四球を挟み8打数連続安打。大量11点を奪い、12―8でヤクルトを下した。この試合で相手先発投手の浅野啓司は打者13人に対し8失点の大乱調も、自責点0の珍記録を残している。

 「野球は2死から」を地で行くような試合を46年前の先輩達が演じて見せた。今季のDeNAも伝統の粘り強い攻撃で20年ぶりのリーグ優勝を目指したい。(敬称略、専門委員)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。本社制定の最優秀バッテリー賞の選考委員会には、第1回から27回連続で資料説明役として出席。

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