3000安打選手の共通点 イチローとボッグスにある厳格ルーティン

[ 2016年8月8日 09:00 ]

メジャー通算3000本安打を達成したイチローは観客の声援にヘルメットをとって応える (AP)

 マーリンズのイチローがメジャー通算3000安打を達成したのは、米国時間8月7日。今から17年前、1999年の同じ日に3000安打を達成した選手がいる。主にレッドソックスとヤンキースで活躍したウェイド・ボッグス。最後はデビルレイズ(現レイズ)所属で、インディアンス戦の6回に史上初めて本塁打で達成した。2人には共通点がある。それは厳格なルーティンがあることだ。

 ヤンキースに在籍していた晩年のボッグスを取材したことがあるが、とにかく話を聞くのが難しい選手だった。もの静かな性格でもあったが、試合前は分刻みで行動が決まっていて忙しいからだ。午後7時5分開始のナイターの場合、午後1時47分に自宅を出て、5時17分に打撃練習を始め、守備練習では必ず150本のゴロを受け、6時47分にダッシュを始める。7時35分開始の時は7時17分となるが、対戦相手のブルージェイズがボッグスのリズムを狂わそうと、球場の時計を7時16分から18分に飛ばしたのは有名なエピソードだ。

 97年の話だが、ミルウォーキーでのブルワーズ戦の試合後、ボッグスに話を聞こうとしたが、ロッカーにいない。どこにいるか探すと、ロッカーの裏側にある壁とのわずかな隙間、真っ暗な中で腕立て伏せをしていた。当時のカウンティースタジアムは古く、ビジターチームのロッカーは狭かったので場所を見つけて、そこでやっていたのだろう。確か、その試合は活躍していた。理由を聞くと「いつもやっていること」との返事が返ってきたことを覚えている。

 試合前は必ずチキンとチーズケーキを食べ、ナイター後は2本のホットドッグとバーベキュー味のポテトチップスを口にし、アイスティーを飲む。イチローも以前はカレーライスを食べるのを日課(今は違うが)とし、遠征先では決まった店でプレーンピザを食べていた。ボッグスは迷信家であり、体内も常に同じ状態にしておきたいイチローとは少し意味合いが違うが、1日24時間のサイクルの中心に野球があるという考え方は同じだ。

 ボッグスは3000安打を達成した99年限りで現役を引退した。通算安打数は3010本だが、本塁打は118本で、安打数に占める割合は3・9%。イチローは通算113本塁打で、安打数に占める割合は3・8%とほぼ同じだ。ボッグスも本塁打を狙えば打てると言われたが、イチローと同じように単打を打つことに徹する打者だった。90年以降の本塁打全盛の時代に3000安打に到達した選手では、希有(けう)な存在の2人。同じ8月7日に達成したというのは面白い。(記者コラム・甘利 陽一)

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2016年8月8日のニュース