【石井一久クロスファイア】61発初V!マ軍スタントン圧巻の弾丸ライナー

[ 2016年7月13日 09:50 ]

タイガースのカブレラ(右)に質問する石井氏

 「生スタントン」の迫力は凄かった。3ラウンドで計61本。本塁打競争に参加した8人の中でも一人だけ別次元という感じだった。メジャー屈指の飛ばし屋で、強靱(きょうじん)な上半身の力を生かしたドアスイングからボールに衝突させるような独特の打ち方。あれだけの飛距離を出す秘密は何なのかとずっと思っていた。

 スタントンの本塁打競争を目の前で見てよく分かったが、上半身と下半身が全く別物で、下半身はほとんど動かない。それは土台がしっかりしている証拠。下半身が全くぶれないから、上半身の力がそのままスイングスピードに表れる。この日の打球速度は最速120・4マイル(約194キロ)。衝突音が明らかに違う。

 本塁打を打つには、よく「打球に角度をつけろ」と言う。決勝で敗れたフレージャーはボールの半分よりやや下を叩いて、角度をつける典型的な打ち方。しかし、スタントンの場合、ボールの真ん中を叩いている感じ。61本の本塁打のうち、最も低い角度で入ったのは12・3度。これだけ低い飛び出し角度でも弾丸ライナーでスタンドに入ってしまう。他の選手と飛距離が同じでも弾道と到達時間が全く違う。彼の本塁打は、放物線という表現は当てはまらない。

 いつもは黒いバットを使っているが、この日は先端だけ黒で、根元にかけては茶色のモデル。バリー・ボンズが使っていたものと同じだ。ボンズは今はマーリンズの打撃コーチとしてスタントンを指導。僕の予想では、師匠のバットを借りてきたのではないか。

 10アウト制ではなく、4分以内にどれだけ本塁打を打てるかを競う方式は昨年から。飛距離によるボーナスタイムや、45秒のタイムアウトなどもあり、よりゲーム性が高まった。お客さんも「あと何秒しかない」などとエキサイトするので、こういうやり方もいいなと思う。またペトコ・パークの演出も素晴らしく、LED照明がコンサート会場のようなライティングで盛り上げていた。

 優勝したスタントンは今季は打撃不振で、本塁打競争だけのために呼ばれた。でも、それだけの価値がある圧巻の本塁打ショーだった。 (スポニチ本紙評論家)

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2016年7月13日のニュース