「やらなあかんでしょ」ヤク坂口を奮い立たせる首脳陣との信頼関係

[ 2016年7月13日 09:35 ]

再起を誓い活躍する坂口

 再起を誓う男が新天地で躍動している。ヤクルトに今季から新加入した坂口が86試合出場で96安打を積み重ね、打率・294。川端、山田につなぐチャンスメーカーでチームに不可欠な存在だ。杉村チーフ打撃コーチと話し合い、開幕前に目標に掲げたシーズン安打数は180本。「目標はでっかくね。獲ってくれたヤクルトに恩返ししたい」と目を輝かせる。

 外野の守備でゴールデングラブを4度受賞。打撃も11年に144試合フルイニング出場し、リーグトップの175安打をマークした。パーマのかかった後ろ髪がヘルメットからのぞく個性的な風貌。「グッチ」の愛称で親しまれた坂口はオリックスの顔だった。

 しかし、翌12年から度重なる故障に苦しんだ。昨季は若返りを図るチーム方針もあり、36試合出場のみ。「もう一度、野球人として勝負したい」と同年オフに自由契約を申し入れて退団した。

 「決断したけど不安もあった。どこか獲ってくれる保証もない。野球を辞めなあかんことも頭をよぎった」と振り返る。だが、技術はさびついていなかった。今年2月の春季キャンプ。杉村チーフ打撃コーチは坂口の打撃練習を見て、驚きを隠せなかったという。

 「オリックスはよくこんないい選手を出してくれた。他のチームで頑張れよという球団の親心もあったんだろうけど」と配慮した上で、「スイングが想像以上に力強かった。体が前に流れる打ち方だけど、選球眼もいい。モノが違うね。レギュラーでやらなきゃいけない選手。180安打も達成できる数字だから言ったんだよ」。

 坂口の活躍の背景には首脳陣との強固な信頼関係がある。6月9日の楽天戦(コボスタ宮城)で左足首に死球を受けて途中交代。患部は腫れてテーピングで固めたが、痛みが引かない。翌10日のロッテ戦(QVCマリン)。練習中も冷や汗が止まらず、三塁ベンチに座ると左足首をさすっていた。記者が「大丈夫?」と聞くと、「根性や。やらなあかんでしょ」と痛みをこらえた作り笑顔を見せ、左足を引きずってグラウンドへ向かった。

 実は坂口が強行出場した10日の練習前、三木ヘッド兼内野守備走塁コーチに、「おまえが行けるなら試合に出てほしい」と声を掛けられていた。「うれしかったね。必要とされているんやなって」。三木コーチの言葉は今も心の支えになっているという。 

 6月8日の楽天戦(コボスタ宮城)で通算1000安打を達成した。七夕に誕生日を迎えて32歳。まだまだできる。必要とされる環境で野球ができる喜びをかみしめ、勝負の夏場も安打を量産する。(平尾 類)

続きを表示

2016年7月13日のニュース