本田圭佑もビックリ? 野球に珍現象「ストライクディレイ」が誕生へ 元NPB審判員記者が解説

[ 2023年1月15日 08:00 ]

本田圭佑
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 カタールW杯で日本中を熱狂させたサッカー日本代表。日本対スペイン戦の解説を務めた元日本代表・本田圭佑氏は「オフサイドディレイ」の場面で「遅いねんオフサイ!出せや!俺がラインズマンやろか!」と語気を強める場面があった。

 「オフサイドディレイ」とは副審がオフサイドと判定していても旗を挙げず、その後もプレーを続けさせることをいう。これにより判定ミスによる得点機会の喪失を防ぐ狙いがある。ゴールの取り消しはできるが、止めてしまったプレーからはゴールが生まれない、という考え。だが、当該の場面は明らかなオフサイドで、本田氏はそれに対して異議を唱えた。そんな光景が野球でも起きる可能性が浮上した。それを「ストライクディレイ」と命名したい。11年から16年までNPB審判員を務めた記者が解説する。

 大リーグ傘下3Aで、今季からストライク、ボールの判定に対する「チャレンジ制度」を導入すると、12日(日本時間13日)にスポーツ専門局ESPN(電子版)が報じた。MLBは将来的な「ロボット審判」採用を見据え、マイナーや提携する独立リーグで試験的に実施してきたが、コンピューターが自動で判定することに反対する意見も多かった。

 3Aでは今季から全30球場で「自動ボール―ストライク判定システム(ABS)」を設置。シーズン半分の試合は「ロボット審判」が判定するが、残り半分は従来通り球審が判定し、1試合で各チーム計3回、投手、捕手、打者が異議を申し立てることができる。その際は動作解析システム「ホークアイ」を使った映像が瞬時に大型ビジョンに映され、観客もボールの軌道を確認することができる。昨季、1Aや秋季リーグで導入され、選手の評判も上々という。
 この投球判定に対するチャレンジが行われると野球はどう変わるか。「ストライクディレイ」が行われるようになるだろう。例えば2死一塁、カウント2―2の場面で盗塁のケース。際どい投球を打者が見送る。球審はこの時、投球に対して「ストライク!」と思っていても「ストライク!」と判定してはならない。「ボール」または判定を下さないことが求められる。

 なぜか。それは盗塁の判定に影響を及ぼすからだ。「ストライク!」と判定すれば三振で3アウト。捕手は送球する必要がないし、送球したとしても内野手は盗塁した走者にタッチする必要がなくベンチに帰るだろう。だが、その後に打者から投球に対するチャレンジが行われ、一転「ボール」に判定が変わったらどうだろう。カウントは3ボール2ストライクとなり、存在しなかった盗塁のプレーが発生する。だからプレーを止めないために審判員は「ストライク」と宣告できなくなる。これが「ストライクディレイ」だ。

 もし球審が見逃し三振とジャッジしても、捕手は念のため二塁に送球することになる。野球の見どころの一つである迫力ある見逃し三振の場面は減り、「ストライクディレイ」、「念のため送球」が多くなる。投手はどのタイミングでガッツポーズするのだろうか。ファンの歓声も「ディレイ」になりそうだ。

 もう一度、想像してみよう。2アウト2ストライクから走者が走る。打者が見送る。審判は無言。二塁の盗塁はセーフのタイミング。ここで捕手がリクエスト。検証の結果「ストライク」に変更で見逃し三振で3アウト。「遅いねん!俺が球審やろか!」。いたるところでそんな声が上がりそうである。(記者コラム・柳内 遼平)

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2023年1月15日のニュース