SNSの発信力とコロナ不安…今回は一過性では終わらない かつては“ご法度”スポーツ界の政治的行動

[ 2020年8月28日 05:30 ]

準々決勝で勝利し、引き揚げる大坂。黒人男性銃撃事件に抗議し準決勝を棄権することを明らかにした(AP)
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 【奥田通信員が見る米スポーツ界の動き】大坂なおみの棄権という決断は、スポーツ専門局ESPNが大々的に取り上げるなど、米国でも大きな驚きをもって受け止められている。プレーする姿や発言で観客に大きな影響を与えてきたトップアスリートが「出場しない」ことで意思を示したことは、これまでほとんどなかった。そこには、かえって強い思いが感じられる。

 かつて、スポーツの世界で政治的行動を行うことはご法度だった。ムハマド・アリは黒人差別が残る米国社会に批判的な言動を繰り返し、ベトナム戦争への徴兵を拒否。ボクシングの世界ヘビー級王座を剥奪され、3年7カ月のブランクを余儀なくされた。当時のバッシングは並大抵でなく、有名選手は政治的発言に慎重なことが少なくなかった。

 その後も人種差別による悲劇が起きると声は上がるものの一過性に終わっていた。今回のような「職場」をボイコットする動きには、一過性で終わる気配が感じられない。SNSの存在も相まって個々の小さな声が拡散し、膨らむ一方だ。

 NBAをはじめ、米国の各プロスポーツでも同様の動きが拡大。白人のスター選手も声を上げ、リーグとしても容認している。コロナ禍で社会不安が増幅する中で、大坂らアスリートが大きなうねりを生み出している。(奥田秀樹通信員)

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