桐蔭学園 藤原監督が目指した“先につながる”ラグビースタイル

[ 2019年1月8日 10:00 ]

<全国高校ラグビー決勝 大阪桐蔭・桐蔭学園>準決勝に終わり、肩を落とす小西主将(手前)ら桐蔭学園フィフティーン(撮影・北條 貴史)
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 練習の締めは花道に見送られてのタックルか、あるいは全速力でのランパスか。翌日は全国大会決勝、ということは現チームでの練習も最後。効果や効率を度外視してでも、最後は闘魂を奮い立たせるようなメニューを課すと思いきや、結局ボールを使わない「エアラグビー」で全体練習は締めくくられた。

 桐蔭学園も以前は決勝前日に、ランパスを取り入れていたという。だが藤原秀之監督は「やらないです。特に(理由は)ないです」とさらりとかわした。意図や効果が疑問視され、現在では否定的に捉えられがちなランパスだが、精神面への作用を含めて、個人的に完全否定するつもりはない。それでも就任17年目の指揮官は、考えを改めたようだった。

 同校のコーチを経て02年度に監督就任。2シーズン目でさっそく花園出場を果たしたが、この大会で「僕の(教える)ラグビーは古いと感じた」という。その後は隔年ごとに選手を引き連れてオーストラリアへ遠征し、自らも本場のコーチングを学んだ。「昔は指導の仕方も堅かった。もっと選手に楽しさを教えないといけない。もっと僕ら(指導者)が変わらないといけない」と認め、指導法が変わってきたのが日本代表FB松島幸太朗(現サントリー)らを擁して両校優勝を果たした2010年度ごろ。平成最後の大会でも単独優勝に届かなかったが、通算6度の決勝進出は誇れる実績だろう。

 藤原監督自身は「点差以上に差があった」という2点差の敗戦だが、今年の桐蔭学園のラグビーは、高校ラグビー界全体が、ぜひ手本にしてほしいプレースタイルだった。局地戦に持ち込まず、15人全員でボールを動かすアタックシステム。決勝も0―12から3連続トライで一時は逆転した。前半28分のチーム3トライ目、フッカー紀伊遼が見せたオフロードパスは、素晴らしいの一言だった。

 昨年度の準決勝で大阪桐蔭に敗れた後、FW頼みだったスタイルを反省し、同校の伝統と言える継続ラグビーに立ち返ったという。昨年の1、2月はパスとキャッチの基本スキルを徹底練習。基礎が築かれた後に、オフロードの要素も付け加えた。春頃には念願だった全面人工芝のグラウンドが完成。それまでは土のグラウンドで足腰は鍛えられた一方、試合と同じスピード感での練習ができなかったというが、巡り合わせ良くそうした課題もクリアされたことが、継続ラグビーの完成度を高めたと言っていい。

 教育の一環とはいえ勝負事。選手も指導者も勝ちたいに決まっている。だからこそ、その方法を考え抜き、1年間をかけて花園の大舞台で発揮する。あるチームはスクラムで、別のチームはモールで、はたまたFWのピックアンドゴーに活路を見出すチームもある。みんな違ってみんないい。個性やチームカラーがゲームを面白くする。だが将来を考えれば、桐蔭学園のようなラグビースタイルが最も選手のためになるのではないだろうか。状況判断や重圧がかかった場面での基本スキルの発揮は、9月開幕のW杯を控える日本代表にとって、もっともっと高めなければならない能力だからだ。

 藤原監督は試合後会見の最後に淡々と「スキル的には上がったと思います。これでラグビーが終わるわけではないでしょうし、先につながればいい。ここまでやってきたことに間違いがあったわけではない」と言った。字面通りなら負け惜しみにも聞こえるが、意図するところではないだろう。これまでの教え子たち、そして現在の部員たちの何人が、今後トップリーグや世界の舞台で活躍するだろうか。その数が、目指したラグビーの真の価値を証明するはずだ。(阿部 令)

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