陵侑、歴史的完全V 日本人初ジャンプ週間4戦4勝!

[ 2019年1月8日 05:30 ]

ノルディックスキーW杯ジャンプ男子個人第11戦 ( 2019年1月6日    オーストリア・ビショフスホーフェン ヒルサイズ=HS142メートル )

4戦全勝でジャンプ週間総合優勝を果たし、大喜びする小林陵
Photo By ゲッティ=共同

 ジャンプ週間最終戦を兼ねて行われ、日本の新エース小林陵侑(22=土屋ホーム)が2本目にトップの137・5メートルをマークして1本目4位から逆転優勝。67回目を迎えたジャンプ週間史上3度目となる4戦全勝の完全制覇を達成し、日本人では97〜98年シーズンの船木和喜(43=当時デサント、現フィット)に続き2人目の総合優勝を決めた。W杯5連勝、シーズン8勝はいずれも日本最多記録更新となった。

 トップと4・0点差で迎えた2本目は追い風。だが、不利な条件は逆転劇の演出に過ぎなかった。ドンピシャの踏み切りから圧巻の137・5メートル。1本目上位の残り3人は圧倒されて距離が伸びず、小林陵は表彰台の中央で右拳を突き上げた。

 「この逆転優勝は僕の中でもデカい。(ジャンプ週間4連勝は)この何十年かで3人しか達成していない偉業。歴史をつくれたことは凄くうれしい」

 ビショフスホーフェンはジャンプ週間で唯一、日本人が勝てない鬼門だった。しかも5日の予選が大雪で順延され、予選と本戦を一日で消化する日程。悪天候で予選が完了できない場合に備え、1本目はジャンプ週間恒例の1対1の対戦形式ではなく、通常のW杯と同じ上位30人が2本目に進む方式に変更された。1本目は助走路に雪が積もって速度が出ず、135メートルで4位。それでも「自分のジャンプに集中した」2本目で本領を発揮した。

 何事にも動じない性格。ジャンプ週間開幕前の会見では海外メディアに「ネオヤパナー(新日本人)」と自己紹介し、大会期間中に用具を忘れて公式練習で飛べなくても平然としていた。技術的には空中姿勢への移行がダントツで速く、どんな条件でも飛距離を出せる。全日本の宮平ヘッドコーチは「しっかり(踏み切りで)スキーに力を与えることができるから(板を)引き上げるのが速くなる。2回目は、もうパーフェクト」と絶賛した。

 W杯よりも歴史が古く、欧州では五輪や世界選手権に匹敵するジャンプ週間で史上3人目の完全V。02年に初めて全勝したハンナバルト氏(ドイツ)は昨季達成のストッフ(ポーランド)と比較して「さらに上のレベル」と称え、オーストリア紙クローネン・ツァイトゥングが「典型的な日本人ではない」と紹介するなど、快挙は欧州で大々的に報じられた。

 「ジャンプは楽しい。サッカーとか野球のように、メジャーなスポーツになってくれれば」と話す日の丸の新エース。2月開幕の世界選手権での活躍はもちろん、今季11戦8勝のW杯で日本人初の総合優勝も夢ではない。

 ▽欧州ジャンプ週間 ドイツ、オーストリアの4つのジャンプ台を8日間で回る、W杯の原型とされる伝統の大会。1952〜53年シーズンに始まった。4試合、計8本のジャンプの合計得点で争われる総合優勝は五輪、世界選手権に並ぶ価値があるとされる。過去の4連勝は2001〜02年のスベン・ハンナバルト(ドイツ)と17〜18年シーズンのカミル・ストッフ(ポーランド)の2人のみ。4連勝は長く達成されず、約1億円の賞金が懸けられたこともある。今回、小林陵が手にしたのは予選トップの賞金なども含め6万5000スイスフラン(約715万円)となった。

 【小林陵侑に聞く 一問一答】

 ――総合優勝だけでなく、4戦全勝が懸かっていたという緊張感は。

 「今日(ジャンプ週間最終戦)勝つことに集中していた。欲してもらえるものでもない。とにかくジャンプに集中していた」

 ――見事な逆転勝利。

 「日本人初のグランドスラムを達成し、歴史をつくれたことは凄くうれしい」

 ――船木和喜、葛西紀明ら日本の名ジャンパーに肩を並べたのでは。

 「まだ自分は五輪の金メダルを獲っていないので、並べない。(所属先の土屋ホームの)葛西監督は何十年も(現役を)やっている。凄い」

 ――葛西さんに抱きしめられたが、どんな言葉を掛けられたのか。

 「愛情だけが伝わってきた」

 ――総合王者の証である黄金のワシのトロフィーを手にした。

 「めちゃくちゃ重すぎた。たぶん30キロくらいある(笑い)。本当に重い」

 ――ジャンプ週間で得た手応えや今後の目標は。

 「いいメンタリティーで飛べたのは、(今後に)つながる。モチベーションは(一つ一つの試合を)楽しめるかどうか」

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