【上水研一朗氏の目】相手に精神的ストレス…“絶対的武器”寝技生かした浜田

[ 2018年9月26日 15:03 ]

女子78キロ級でフーシェ・ステーンホイス(手前)を破り、初優勝の浜田尚里
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 立ち技でも2試合で一本勝ちした浜田だが、絶対的な武器である寝技を生かした戦いぶりだった。3回戦では先に技ありを取られながらも寝技で逆転勝ち。準々決勝も下からひっくり返して抑え込んだ。あれだけの技術を見せられると、相手は潰されることを怖がり、精神的なストレスを抱えながらの試合運びとなる。決勝も危ない場面はあったが、粘り強い戦いを見せた。

 立ち技はまだ発展途上だが、準決勝で見せた内股からの大内刈りなど、連絡技を中心にして、ポイントを奪えなくても潰れたところを寝技にいくのが今後も主な戦術になるだろう。ただし優勝したことで、今後はもっと厳しく対策されてくる。女子78キロ級としては決して大きくないので、上から被せてくる相手に下から突き上げる、あるいは担ぎ技に入る技術を磨いてほしい。

 度重なるケガで実戦不足だったウルフは、持ち味である危機察知能力に欠けていた。序盤戦は勝ったが、敗れた準々決勝や3位決定戦は、不用意に出たところを投げられた。100キロ級は「よーい、どん」で並外れた力を出してくる相手ばかりなので、前半粘って後半勝負の戦術自体は間違っていない。ただ、ブダペストでの前哨戦に出場したとはいえ、試合勘を完全に取り戻すまでには至っていなかった。

 90キロ級同様、この階級も10割の状態で勝てるかどうか、という非常に厳しい階級。アジア大会を勝った飯田健太郎、リオ五輪銅メダルの羽賀龍之介と競い合い、日本のレベルをもう一段階上げないと、世界で勝つのは難しいと感じた。(東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)

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