稀勢「クソッ」日馬に敗れ3敗…綱獲り黄信号に放心状態

[ 2016年7月23日 05:30 ]

寄り倒しで日馬富士(右)に敗れ土俵下に落ちる稀勢の里

大相撲名古屋場所第13日

(7月22日 愛知県体育館)
 大関・稀勢の里の綱獲りが、極めて厳しくなった。横綱・日馬富士との2敗対決は見せ場をつくれずに寄り倒しで敗れ、ここまで守り続けていた賜杯レースのトップから陥落した。残り2日で自力優勝の可能性はなくなり、初優勝が条件とされる横綱昇進に向けて痛恨の黒星。3敗は稀勢の里、横綱・白鵬、平幕・貴ノ岩の3人となった。

 未来を変えるためには絶対に勝たなければならない一番だった。それだけに敗戦のショックは大きかった。稀勢の里は支度部屋に戻ると大きく息をつき、小さく「クソッ」とつぶやいた。負けた取組のあとは険しい表情を浮かべることの多い大関だが、呼吸を整えてから目を開くと、悔しさを通り越して放心状態のようだった。報道陣の質問には全て無言。何事かを考えるように両手首と足のテーピングをゆっくりと外した。

 勝てば単独トップとなり、初優勝と横綱昇進に大きく前進する日馬富士との2敗対決。稀勢の里は全く攻められなかった。低く鋭い相手の立ち合いに左下手と右前まわしを許し頭をつけられ、自身の左の差し手は殺された。左を抜いて上手を取りにいこうと引いたところを一気に攻められ、白房下へ転がり落ちた。

 稀勢の里はこの日の朝稽古後、勝負のポイントとして「いかにいい相撲を取りきれるか、力を出し切れるか」と話していた。格下には力を出し切れなくても勝てることがあっても、相手が横綱ではそうはいかない。紛れもなく力を出し切れなかったことが敗因だった。

 3敗に後退したが、優勝の可能性は消えていない。14日目に白鵬を破れば千秋楽まで望みがつながる。審判長として取組を見た審判部の友綱副部長(元関脇・魁輝)は「動きが悪い。ここのところ(動きの悪さが)変わっていない」と内容の悪さを指摘。それでも、優勝がなくなったわけではないため、綱獲りについては「とにかく最後まで頑張ること。あとは終わってから」と話すにとどめた。

 稀勢の里の地元の茨城県牛久市役所では、千秋楽に優勝が懸かることになればパブリックビューイングを実施する。だが、白鵬に敗れればその可能性はなくなるだけでなく、4敗となれば綱獲りも振り出しに戻るとみられる。敗戦ショックを引きずってはいられない。

 ▽稀勢の里の日馬富士戦 今場所で幕内58回目の対戦となり、23勝35敗と負け越している。今年の対戦は初場所が寄り切られて黒星、春場所がはたき込まれて黒星、夏場所が押し出して白星だった

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