ロシア禁止薬物問題 放置していたIOCにも責任 両者で協力し不正撲滅を

[ 2016年7月23日 11:08 ]

 スポーツ仲裁裁判所(CAS)の21日の裁定により、原則としてロシアの陸上選手はリオデジャネイロ五輪に出場できなくなった。組織ぐるみでのドーピング違反が明らかになったロシア陸上界全体を資格停止処分とした国際陸連の決定には批判もあったが、CASが支持したことで事態は大きく動いた。今回の裁定が24日に予定されている国際オリンピック委員会(IOC)理事会の判断に大きな影響を与えることは確実で、先の世界反ドーピング機関(WADA)の勧告通り、陸上だけでなくロシア選手団全体がリオ五輪への参加を拒否される可能性は一気に高まった。

 「ドーピングをしていないクリーンな選手の権利まで奪うべきではない」という声もある。だが、いったいどうやってクリーンであることを証明するのか。証明しようにも、ロシア国内ではドーピングを検査すべき機関が不正に手を貸し、検体のすり替えなどが頻繁に行われていたというのだから、少なくとも国内にいた選手は証明のしようがない。海外に拠点を置いていた選手にしても、本人の知らないところで監督やコーチなどから禁止薬物を投与されていた可能性は否定できない。

 日本では選手に比べて指導者への評価は低いが、海外ではむしろ選手よりも指導者の方が評価されることが多い。ロシアも同様で、五輪の金メダルに対する報奨金は選手自身に1200万円。指導者は複数の金メダリストを誕生させれば最大2400万円がもらえるシステムになっている。ドーピングの危険を冒す対価としては安いように見えるかもしれないが、ロシア人の平均月収は約8万円と言われるから、日本に当てはめれば1億円以上の価値があることになる。これに車やマンションなどの「副賞」も加わるのだから、指導者がドーピングに手を染める気持ちも分からないではない。おそらく今回の国家ぐるみの違反を主導した大臣クラスの幹部たちにはそれ以上の報酬があったのだろう。

 もしロシア選手団の参加が認められたとして、もしその中から1人でも再び陽性反応が出たらどうするのか。ロシアはもちろん、IOCの受けるダメージは参加を拒否した場合よりもはるかに大きい。対戦する他国の選手たちにしても、目の前のロシア選手がドーピングをしているのかもしれないとなれば、とても平常心で相手と向き合えるとは思えない。

 ただし今回の件では、IOCにも大きな責任がある。旧ソ連の時代からロシアが国家ぐるみでドーピングに手を染めているのではないかという疑惑は多くの関係者が抱いていた。にもかかわらず本腰を入れて調査することなく、今まで放置してきた責任は重大だ。

 事ここに至っては、ロシア選手団全体がリオ五輪に参加できなくなってもやむをえないのではないか。今回の件はそれだけ悪質だと言うことだ。こんな悲しい出来事は二度と繰り返してはいけない。IOCもロシアも自らの責任をきちんと自覚し、対立するのではなく、互いに手を取り合って本気でアンフェア撲滅に取り組むべきだろう。(藤山 健二)

続きを表示

「羽生結弦」特集記事

「NBA」特集記事

2016年7月23日のニュース