絹川、ぶっちぎりA標準突破「地上に出られた」

[ 2011年6月13日 06:00 ]

女子5000メートル決勝で、A標準記録を突破して優勝した絹川はタイムを表示するボードの前で自らAポーズ

陸上日本選手権最終日

(6月12日 埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場)
 女子5000メートルで絹川愛(めぐみ、21=ミズノ)が15分9秒96の好タイムで初優勝。世界選手権(8月27日開幕、韓国・大邱(テグ))の参加標準A記録を突破し、代表に内定した。宮城・仙台育英高時代の07年に世界選手権に出場した逸材は、度重なる故障で雌伏3年。再び世界の舞台に駆け上がった。

 ゴールへ向かう苦しげな表情は「何秒で走っているかも分からなかった」という必死さの表れだった。残り1100メートルでトップに立ち、テープを切った絹川の目に飛び込んだのは、タイムと参加標準記録突破を示す「Q」の文字。「地獄を見てきたんで、天国というより、ようやく地上に出られたなという感じ」と振り絞った声は、笑顔とは対照的に震えていた。

 仙台育英高3年時の07年、1万メートルで世界選手権大阪大会に出場した。高校卒業後、08年4月にミズノ入社。逸材は北京五輪へ向け、順調に進んでいた。だが、疲労骨折に始まった故障続きで、選考会にも出られないまま五輪を断念。本人の言う「地獄」が始まった。体のバランスは崩れ、真っすぐ歩くことすらできない。高校時代から指導する渡辺高夫コーチ(63)が支え、ようやく歩行する日々。「介護士になったようだった」と同コーチは振り返った。

 それでも、2年以上休むことなく、復活への道を模索した。ようやく走ることもできるようになってきた今年、悲報が飛び込んできた。5月15日、高校の先輩で尊敬する選手だったサムエル・ワンジルさんの死。福島・会津合宿中に泣きはらす絹川に、渡辺コーチは声を掛けたという。「俺の教え子で、世界に通用するのはおまえだけになった」。次の日から、目の色を変えたランナーの姿があった。

 「ワンジル先輩の魂は受け継いだ。ずっと絹川愛の走りはオフだったけど、きょうオンしたという感じです」。渡辺コーチは「5000メートルは能力だけで走れる距離。今年秋に1万メートルを走れれば、来年はマラソンも見えてくる」と評した。世界選手権は、あくまで通過点。今年の夏は、絶望の淵で天賦の才に強さを加えたランナーの、本当のスタート地点にすぎない。

 【女子5000メートル決勝】(1)絹川愛(ミズノ)15分09秒96(2)新谷仁美(千葉陸協)15分20秒35(3)小林祐梨子(豊田自動織機)15分42秒85
 [世]ディババ(エチオピア)14分11秒15
 [日]福士加代子(ワコール) 14分53秒22 

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