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オランダ3分の給水が生んだ奇跡の6分 史上最も遅い逆転勝利

[ 2014年7月1日 05:30 ]

<オランダ・メキシコ>試合終了間際に決勝のPKを決め、コーナーフラッグを蹴って喜ぶフンテラール (AP)

W杯決勝トーナメント1回戦 オランダ2―1メキシコ

(6月29日 カステラン)
 オランダがW杯史上に残る逆転勝利で8強入りした。前回大会準優勝のオランダはメキシコと対戦。先制された後、ルイス・ファンハール監督(62)がシステム変更で流れを引き寄せ、後半43分にウェスリー・スナイダー(30=ガラタサライ)が同点ゴール、ロスタイムにクラース・ヤン・フンテラール(30=シャルケ)がPKを決めて2―1で勝った。オランダは5日(日本時間6日)の準々決勝でコスタリカと顔を合わせる。 
【試合結果 決勝トーナメント】

 敗退目前。オレンジ軍団が目覚めた。0―1の後半43分、CKからフンテラールが頭で落とし、スナイダーが右足で豪快なミドルシュートを叩き込んだ。前回大会得点王の今大会初ゴールで追いつくと47分、ロッベンが右サイドからドリブルで切れ込み、ペナルティーエリアで倒されてPKを獲得。これをフンテラールが49分に決めて勝ち越した。

 延長戦、PK戦決着を除き後半43分からの逆転勝ちは史上初。ファンハール監督は「鍵はシステム変更だ。まず4―3―3に替えてチャンスをつくり出したがポストやGKに阻まれた。そこで給水タイムにプランBに切り替えた。あの時間が我々にアドバンテージをもたらした」と振り返った。

 後半3分に先制されると指揮官は次々システムを変えた。後半11分にDFフェルハーフに代えてFWデパイを入れて5―3―2から4―3―3へ。右サイドに回ったロッベンがドリブルで仕掛けて決定機をつくった。しかし相手GKの好守もありゴールを奪えない。

 分岐点はこの試合で初めて採用された給水タイム(3分間)だ。後半31分に1メートル87の長身FWフンテラールが投入された直後、主審の指示で選手たちが水を飲むためベンチ前に集まった。そこでファンハール監督はメモを手に「プランB」移行を説明。再開後、右サイドバックだった1メートル84のカイトまで前線に上げて4―2―4の超攻撃的布陣にしてパワープレーを挑み逆転につなげた。

 かつてアヤックス、バルセロナ、バイエルンMを率い、来季からマンチェスターUを指揮する名将は「すぐ適応した選手たちが素晴らしい」と称えたが、カイトが「戦術変更の可能性は試合前に聞いていた」と証言した通り周到な準備があったからこそ大胆な采配が好結果を生んだ。パワープレーも「練習してきた」と言う指揮官。同点後にはカイトを再びDFに下げて4―3―3に戻して最後まで試合をコントロールし続けた。

 3月の親善試合でフランスに0―2と完敗。若手中心の守備陣が経験不足を露呈し、自国メディアの評価は低かった。前評判を覆し、2大会連続8強入りを決めたファンハール監督は「1次リーグさえ突破できないと言われていたんだ。選手は浮かれていない」と皮肉たっぷりに言い放った。

 ▽給水タイム FIFAの基準では気温32度を超えた場合、審判の判断で前半30分前後と後半30分前後に暑さ対策の給水タイム「クーリングブレーク」を3分間設けることができる。中断時間はロスタイムに追加される。W杯では今大会から導入され、オランダ―メキシコ戦で初めて実施された。オランダ―メキシコが行われたフォルタレザの会場は気温32度、湿度68%だった。

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