「まんが日本昔ばなし」語り手 常田富士男さん死去 温かみあった「むかーし、むかし…」

[ 2018年7月20日 05:30 ]

「まんが日本昔ばなし」で長年語り手を務めた常田富士男さんと市原悦子=87年
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 テレビアニメ「まんが日本昔ばなし」で長年、語り手を務めた俳優の常田富士男(ときた・ふじお)さんが18日午後、脳内出血のため東京都内の病院で死去した。81歳。長野県生まれ。葬儀・告別式は近親者で行う。喪主は長男青児(せいじ)氏。「むかーし、むかしのことじゃったぁ」の温かな語り口でお茶の間に親しまれた。

 親族によると、常田さんは3年前に脳内出血で入院したが、懸命にリハビリに励み1年ほどで仕事復帰。しかし、今年2月に脳内出血を再発した。それからは会話ができない状態が続き、18日に妻のヤス子さん(81)、長男夫婦、長女らにみとられて静かに息をひきとった。

 3年前に倒れてからは継続して仕事を入れることはなかったが、こだわったのが民話を語る朗読劇「民話の世界」。約20年間にわたって全国各地で開いてきたライフワークだ。これを昨年7月に西東京市で開催したのが最後となった。

 親族は「作品の話はあまりしなかったが、どの仕事も思い入れが強かった。礼儀には厳しかったが、優しい人でした」と話した。

 高校卒業後、上京して劇団民芸の養成所に入所。米倉斉加年さん(14年死去、享年80)らと劇団青年芸術劇場を結成しドラマなどに出演する一方、バラエティー番組「巨泉×前武 ゲバゲバ90分!」(日本テレビ)でも活躍。とぼけた風貌と独特の口調で知名度を得た。

 75年からはTBS系アニメ「まんが日本昔ばなし」のナレーションを女優の市原悦子(82)と約20年間担当。94年まで全1468話をさまざまな声色で、2人だけで全登場キャラクターを分担した。常田さんは「声優どころか外国映画の吹き替えの経験すらなく“一体どういう仕事か”と首をかしげながらスタジオ入りした」と振り返っている。独特の語り口に白羽の矢がたったもので、「むかーし、むかしのことじゃったぁ」など、しゃがれた温かみのある語り口で子供たちを作品に引き込んだ。

 また、宮崎駿監督のアニメ映画「天空の城ラピュタ」では、鉱山に住む老人・ポムじいさん役を担当。ほかに、黒澤明監督の「赤ひげ」、今村昌平監督の「楢山節考」などの多くの映画にも出演した。

 ≪市原悦子「昔話の世界に生きていたような人」20年間1468話でコンビ≫「まんが日本昔ばなし」でコンビを組んだ市原は追悼コメントを発表。「雨の日もやりが降る日も録音を共にしました。社会のスピードは速くなっていったけれど、2人ともそういうことには動じず、じっくりとやりました」と振り返った。番組では2人で全登場キャラの声を分担。「1人が12人くらいの役をこなしましたよ。常田さんも女もやるし、私もいろんな役をやる。それが配役がずれることがあるの。あら、常田さんだったはずなのにと」と当時のエピソードを明かした。常田さんについては「昔話の世界に生きていたような人」といい「だからおうちには犬がいるし、サルがいるし、ヘビがいる。いろんな動物が小高い木の間に生きている。そういうおうちの話を聞くと、まるで昔話を聞くようで」と回想。「あちらでお会いしたらまた一緒に昔話の語りをやりましょうね」としのんだ。

 ◆常田 富士男(ときた・ふじお)1937年(昭12)1月30日生まれ、長野県出身。終戦後、熊本の小学校に移り、高校卒業まで過ごす。新劇活動を経て、テレビ・映画に進出。市川崑監督作品では常連俳優の一人だった。77年の東京都保谷市(現西東京市)市長選に出馬した経験も。

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