グラビア系雀士がテレビを変える!?

[ 2016年9月1日 10:00 ]

 【牧 元一の孤人焦点】スター候補は思わぬところにいるものだ。

 「高宮まり」

 と書いても、知らない人がほとんどだろう。私もつい先日まで知らなかった。

 初めて目にしたのは番組の中だった。テレビの地上波ではなく、インターネットの「amazonビデオ」。映画やドラマなど数多くのコンテンツが並ぶ中、何を見ようか検索していたら、偶然たどり着いたのだ。

 それは「第13回女流モンド杯」だった。女性たちが麻雀でしのぎを削る大会の収録番組だ。冒頭で参加者4人が次々と紹介されたが、最後の1人に目がくぎ付けになった。その女性のワンピースの胸元から豊かなバストの谷間がのぞいていた。顔は「美形」と称して間違いない。実況者は彼女を「グラビア系雀士」と説明した。すぐにネットで調べると、グラビアアイドルとしても活動していることが分かった。こんな逸材が麻雀界に存在しているとは…。

 私が麻雀を知ったのはまだ子供の頃の1970年代。親の目を盗んで、日本テレビ系の深夜番組「11PM」のワンコーナー「麻雀実践教室」を見たのがきっかけだった。その時はルールを知るはずもなかったが、大橋巨泉さんら大人たちが真剣な表情で卓を囲み、牌をつもったり捨てたりする姿に興味をそそられた。

 当時の東京には雀荘があふれていた。大人はもちろん、大学生も講義をサボタージュし、点棒のやりとりにいそしんでいた。高校生になってルールを覚えた私は親に麻雀牌を買ってもらい、同級生たちと遊んだ。友だちの家に行けば、そこにも牌があった。みんな、阿佐田哲也の小説「麻雀放浪記」をむさぼるように読んでいた。

 しかし、いつからか、雀荘はなくなり始めた。愛読していた戦術指南雑誌の「近代麻雀」もすっかり漫画誌に変わった。90年代半ばから2000年代初めまで人気だったフジテレビ系の番組「THEわれめDEポン」も地上波では放送されなくなった。多くの人の生活から麻雀は消えた。私ももう30年近く卓を囲んでいない。

 ところが、である。麻雀は生きていたのだ。発展していた、と言った方が適切かもしれない。学生の頃の私が想像さえしなかった「グラビア系雀士」が実在しているのだから。

 高宮まりの豊かな胸に血迷ったわけではない。彼女の魅力は、麻雀の打ち姿にある。りりしいのだ。気品、知性を感じさせるのだ。それは初出場した第11回女流モンド杯で優勝した実力に裏付けられている。

 高宮まりがいれば、この時代でも、地上波で深夜の麻雀番組が成立するのでは!?(専門委員)

 ◆牧 元一(まき・もとかず)編集局文化社会部。放送担当、AKB担当。プロレスと格闘技のファンで、アントニオ猪木信者。ビートルズで音楽に目覚め、オフコースでアコースティックギターにはまった。太宰治、村上春樹からの影響が強い。

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