贖罪を覚悟した高畑淳子…母はつらいよ

[ 2016年9月1日 09:30 ]

涙を拭い質問に答える高畑淳子

 【佐藤雅昭の芸能 楽書き帳】「菊池寛が落語になる日」と題した春風亭小朝(61)の独演会に出掛けた。8月23日の新宿・紀伊国屋ホール。タイトル通り菊池寛の小説を一席の落語に仕立てて高座にかける会で、4月25日に続いての第2弾。「鼠小僧外伝」に材を取った「ねずみ小僧」と、「妻は皆知れり」から「妻の手紙」の2作を熱演した。

 プロとはいえ、うまくまとめ上げるものだ。周りの席からは「もとになった小説を読んでみたい」というささやきも聞かれた。原作が再び注目を集めれば、出版社にとっても願ったりだろう。

 ゲストが出てきた。小湊昭尚(37)というイケメン尺八奏者だ。両親から手ほどきを受け5歳で演奏活動を始めた神童。東京芸大卒業後は民謡からポップスまでジャンルを超えて活動しており、「リンゴ追分」などを披露して魅了した。

 恥ずかしながら名前を聞いたことがある程度だったが、この人、NHK大河ドラマ「真田丸」でもその音色を響かせている。自己紹介でそのことに触れてから一気に距離が縮まった。同様に親近感を抱いたお客さんも少なくなかったようで、それから会場の雰囲気もまろやかになった。

 その「真田丸」に出演中の女優高畑淳子(61)は仕事も手に付かない様子。長男で俳優の高畑裕太容疑者(22)が8月23日、群馬県前橋市内のホテル客室で40代の女性従業員に乱暴するなどして強姦(ごうかん)致傷容疑で県警に逮捕された件が重く影を落とす。

 38歳で出産。シングルマザーとして育て上げ、自分と同じ道に進んだ息子も昨年のNHK朝の連続テレビ小説「まれ」で注目を集め始めた。昨今ではバラエティー番組にも重用され、軌道に乗った感があっただけに余計に嘆きは大きい。

 思い出したことがある。若松孝二監督がメガホンを取った1982年公開の映画「水のないプール」の逸話だ。薬物を悪用して性犯罪を働く男が主人公の物語。内田裕也(76)が主演し、ヒロインは高畑淳子に決まっていた。ところが撮影開始直前に降板。急きょ中村れい子(56)が代役に立ち難局を乗り切った。このドタキャンを今でも裕也は不快に思っている。

 裸があり、そしてレイプされる役どころにおじけづいての降板と言われた。劇中の設定でも逃げ出したくなるのだから、被害女性の怒り、悔しさ、絶望感がいかばかりのものかは理解できるはず。成人した子供の犯罪に親が責任を負うべきかどうかは意見の分かれるところだが、26日に会見した淳子は「(息子と)共に贖罪(しょくざい)を」と明言。そう言い切った以上、今度は逃げ出せそうにない。(編集委員)

 ◆佐藤 雅昭(さとう・まさあき)北海道生まれ。1983年スポニチ入社。長く映画を担当。

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2016年9月1日のニュース