仙台育英の147キロ左腕・仁田 夏春連覇で東北に「元気」を 震災から12年…同郷・朗希のように

[ 2023年3月11日 04:50 ]

18日開幕 第95回選抜高校野球大会組み合わせ抽選会 ( 2023年3月10日    大阪市内 )

仙台育英・仁田

 第95回選抜高校野球大会(18日開幕、甲子園)の組み合わせ抽選会が10日、大阪市内で行われた。昨夏、春夏通じて東北勢の甲子園初優勝を飾った仙台育英(宮城)は、慶応(神奈川)と大会4日目第3試合で対戦。11日で東日本大震災から12年。岩手県大船渡市出身の仙台育英の最速147キロ左腕・仁田陽翔(3年)は、特別な思いを胸に2度目の甲子園に挑む。

 ロッテ・佐々木朗が震災の傷を癒やし、日本を代表する投手になる礎をつくった大船渡市。同じ場所で育った仁田は、小学生時代の猪川野球クラブ、大船渡一中軟式野球部で4歳年上の佐々木朗と同じユニホームに袖を通した。震災から12年。最速147キロでプロから注目される存在となった左腕は、特別な思いを胸に組み合わせ抽選の日を迎えた。

 「復興のための力になれるかは分からないんですけど、少しでも東北と地元の方を元気づけられることができるかもしれない。選抜で良い結果を報告できるように頑張ります」

 11年3月11日、東日本大震災が故郷を直撃した。5歳だった仁田は大船渡市内のスーパーで母・美千子さんと被災。店内の床が波打つ中で母は買い物かごを投げ出し、息子を抱えて駐車場に避難した。家族は無事だったが、未知の恐怖に涙が止まらなかった。

 心に傷を負った少年時代。運命的な出会いがあった。小3だった兄・恒輝さんが所属していた野球チームに、陸前高田市で被災し転居してきた佐々木朗が入団した。実家にも遊びに来る兄の同学年の友人は、いまや日本を代表する投手。「憧れの存在。自分もそういう選手になれるように」と目標になった。「3・11」以降、仁田は人前で涙を流すことなく、野球に打ち込んだ。高校進学を機に大船渡を離れて両親を心配させたが、昨夏の甲子園で東北勢初の日本一に貢献し、一つ恩返しができた。

 慶応との初戦が決まった選抜。「両親が不自由なく育ててくれた。いつも自分のやりたいことをやらせてくれたので、自分が甲子園を楽しむことが親への恩返しになると思います」。震災を経験した左腕が、思いを新たに夏春連覇に挑む。(柳内 遼平)

 ▼佐々木朗と震災 陸前高田市立高田小で野球を始めた3年の時、東日本大震災を経験。小学校で被災し付近の高台に避難。父・功太さん、祖父母を亡くした。大船渡市へ転居後は猪川野球クラブでプレーし、大船渡一中を経て大船渡に進学。3年夏は岩手大会決勝で登板回避し敗れ、甲子園出場はかなわなかった。4学年下の弟・怜希は小3から猪川野球クラブで野球を始め、仁田とは同学年のチームメートとして大船渡一中まで一緒にプレーしている。

 ◇仁田 陽翔(にた・はると)2005年(平17)6月10日生まれ、岩手県大船渡市出身の17歳。猪川小3年から猪川野球クラブで野球を始め、大船渡一中では軟式野球部に所属。仙台育英では1年春からベンチ入り。50メートル走6秒4。遠投100メートル。憧れの選手はロッテ・佐々木朗。好きな言葉は「平常心」。1メートル75、74キロ。左投げ左打ち。

 ≪高橋、湯田…最強投手陣≫昨年の甲子園でも活躍した右腕の高橋煌稀(3年)、湯田統真(3年)、左腕・仁田は健在。成長著しい最速143キロ左腕・田中優飛(3年)もベンチ入りする予定だ。今大会「最強投手陣」で強打の慶応と激突する。須江航監督は「(慶応は)打力で秀逸な成績を残されている。組織力、チームの一体感も丁寧につくられている」と警戒した。

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