佐々木朗希「今日このマウンドに立てたことに感謝」 侍史上最年少勝利投手 「3・11」に魅せた8奪三振

[ 2023年3月11日 22:34 ]

WBC1次ラウンドB組   日本10―2チェコ ( 2023年3月11日    東京D )

<日本・チェコ>勝利し、ガッツポーズの佐々木朗(撮影・光山 貴大)
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 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンドB組は11日、東京ドームで2試合が行われ、日本はナイターでチェコと対戦。10―2で勝利して3連勝を飾った。先発の佐々木朗希投手(21=ロッテ)は3回2/3を投げ2安打1失点(自責0)で8三振を奪って勝利投手となった。

 ヒーローインタビューのお立ち台に上がった佐々木朗に超満員の観衆から拍手が注がれる。「満員のドームの中で投げることができてうれしいです。いろいろありましたけど、自分のできることをしっかりやって、今日このマウンドに立てたことにとても感謝しました。たくさんの応援は力になりますし、引き続き応援のほど、よろしくお願いします」と話すと、拍手はさらに大きくなった。

 練習開始前にグラウンドで円陣を組んで黙とうをささげた。佐々木朗は母・陽子さんが観客席で見守る中、火の噴く直球を投げ込む。初回先頭のV・メンシクに3球連続160キロ台で右飛。2死後のフルプの初球は164キロだ。4日の中日との壮行試合で日本人最速165キロを計測し、大谷に並ぶまでの自己最速。163キロ直球を左翼二塁打され、負傷欠場した源田の代役として遊撃で本戦に初先発した中野の失策が絡んで1失点したが、自分を信じて腕を振った。

 岩手県の陸前高田市出身。兄の影響で野球を始め、小学3年生で地元のスポーツ少年団に入団した。父や兄とキャッチボールをする日常は突然奪われた。父・功太さんは37歳の若さで命を落とした。祖父母も奪われた。津波で家も流され、大船渡市への移住を余儀なくされた。成人式では、陸前高田市と被災後に移って育った大船渡市、2つの成人式に出席した。佐々木朗は「地元が大好き」と言う。この日は2つの地元でパブリックビューイングが開催された。

 13年に東北に希望をともした楽天・田中将と同じ黄色のグラブを左手にはめ、世界デビュー戦でも使用した。震災当時に9歳だった少年は田中将に勇気をもらい、大船渡3年時には163キロ。昨年4月10日のオリックス戦では完全試合を達成した。今は「みんなに見られる立場なので小さい子たちの道しるべになれたらいい」と立場が変わった。

 2回以降はフォーク、スライダーを増やして打者12人を1安打に抑えた。2回は2死一塁から、ハイトマルの中前に抜けそうな打球に対し、よけるように出した左足のスパイク部分に直撃する場面も。打球方向が変わって遊ゴロとなったが、ヒヤリとするシーンだった。3回は安打と四球で1死一、二塁にピンチを迎えたが無失点に抑えた。4回1死一塁からスモラを空振り三振に打ち取ったところで球数制限65球を超える66球となったため、お役御免となった。2番手の宇田川がハイトマルを空振り三振に打ち取ると、佐々木もベンチで拍手した。

 佐々木朗は現在21歳4カ月。WBCの日本代表としては09年東京ラウンド・中国戦のダルビッシュ有の22歳6カ月を抜く最年少勝利になった。また、1試合8奪三振は13年2次ラウンド・オランダ戦の前田健太の9奪三振に次ぎ、06年準決勝・韓国戦の上原浩治、09年2次ラウンド・キューバ戦の松坂大輔と並ぶ2位タイとなった。

 「僕が投げている姿で何かを感じてもらえたらと思います」。WBC初マウンドでみせたパフォーマンスは、チームに、日本に、被災地に、天国に届けるものとなった。

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