【スポニチスカウト部(17)】日本製鉄鹿島・大津 新武器ワンシームで急成長

[ 2022年6月14日 06:00 ]

ワンシームを武器にチームに勝利をもたらした日本製鉄鹿島・大津
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 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手たちの素顔を紹介する。第17回は日本製鉄鹿島の最速152キロ右腕・大津亮介投手(23)。社会人野球の2大大会である日本選手権と都市対抗出場に導いた男が、プロ入りを目指す。

 北関東の都市対抗第2代表を決めるSUBARUとの決戦が5日、太田市で行われた。日本製鉄鹿島は7回途中からエース・大津を投入。1点リードで迎えた9回2死三塁。都市対抗出場が懸かる勝負どころだった。最後の打者をワンシームで一ゴロに仕留めると歓喜の瞬間が訪れた。
 「ちょっと頭が真っ白になりました。去年からやってきたことがすべて結果に表れました」

 1メートル76、67キロの細身から繰り出す直球は最速152キロで常時140キロ台後半をマーク。日本選手権出場を決めた4月のJABA静岡大会ではMVPを獲得し、都市対抗出場にも大きく貢献した大黒柱だ。帝京大時代から評価の高かった直球に、絶対的な変化球が加わったことで急成長を遂げた。

 日本製鉄鹿島に加わった21年春。プロ入りを目標とする大津は、元DeNAの伊藤拓郎投手(29)に、社会人とプロの打者の違いについて尋ねた。伊藤は「力だけじゃ抑えられないのがプロ」と即答。大津は新たな球種の必要性を感じた。

 同年のシーズンは日本選手権も都市対抗も出場できずに終わった。進化を誓った大津はツーシームに挑戦するなど試行錯誤の末、巨人・菅野が投げる縫い目に指をかけないワンシームに出合った。投球動画を見て頭で覚え、ブルペン投球で体に叩き込んだ。習得した130キロ台後半で右打者方向に鋭く動く新球種はカウント球に最適だった。また、少し指を開くことでスプリットのように落ちて決め球にもなった。新たな武器は大津とチームに勝利をもたらした。

 7月18日に東京ドームで開幕する都市対抗がプロ入りへの最後のアピールの場。「舞台は整った。あとはチームを勝たせるだけ」。初の大舞台に挑む男が一球に魂を込める。 (柳内 遼平)

 ○…都市対抗出場を決めた翌日のミーティングで、選手に休養期間を設けることが告げられた。大津はその日のうちに故郷・福岡に帰るため、成田空港へ車を走らせた。両親が住む実家に戻ると、母の作ったドライカレーを頬張り童心に返った。福岡から遠く離れた群馬で開催された都市対抗予選を応援に訪れていた両親に「もっと頑張ってアピールするよ」と本大会での躍動を誓った。本場の博多ラーメンを食べて福岡での学生時代を思い出し、朝倉市の温泉に漬かって心身ともにリフレッシュ。「疲れが一気に取れた」と明るい表情で鹿嶋市に帰還した。

 ☆球歴 志免中央小4年時に志免ブラザーズで野球を始める。志免中時代では宇美スターズでプレー。九産大九州では2年春に背番号13で甲子園出場。帝京大では2年秋からベンチ入り。

 ☆球種 直球、カットボール、スライダー、カーブ、チェンジアップ、ワンシーム、スプリット。

 ☆直球の最速 九産大九州では139キロ、帝京大では147キロ、日本製鉄鹿島では152キロを計測。

 ☆ダブルドーム 東京ドームで開催する都市対抗と京セラドームで開催する日本選手権の両大会に出場することを意味する。

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