理由は一つ…担当記者が見たエンゼルス・マドン前監督の早期解任の理由

[ 2022年6月14日 07:45 ]

解任が発表されたエンゼルス・マドン監督(撮影・篠原 岳夫)
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 いまだに実感がない。エンゼルスがジョー・マドン前監督(68)の電撃解任を発表してから約1週間が経過した。監督通算1382勝の知将として知られるが、自身初のシーズン途中解任。解任会見はおろか、公式コメントも発表されなかった。

 記者は2018年から大谷が所属するエンゼルスを現場で取材し、監督交代は3度目。素晴らしい監督ばかりだったが、マドン前監督が最もメディア対応に積極的だった。試合前の「囲み取材」は質問が途切れるまで、いつも20分以上は行っていた。1対1の単独取材を申し込んで断られたことは一度もなく、断っている場面も見たことがない。

 常識にとらわれず、極端な守備シフトを敷く戦術のパイオニア。今季は細かな継投や満塁での敬遠策など物議を醸す采配があったとはいえ、救援陣の不安定さが増した5月以降は、野手にもトラウト、レンドン、ウォードなど主力に負傷者が増え始め、誰が監督を務めても難しい状況だっただろう。

 ただ、ペリー・ミナシアンGMの動きは早かった。解任は誰が監督となっても苦戦が予想される、いずれも地区首位のメッツ、ドジャースとの連戦後の方がいいという見方もある中、そうはしなかった。理由は一つ。プレーオフ進出をまだ諦めていないからだ。

 辛口で知られるロサンゼルス・タイムズ紙のコラムニスト、ディラン・ヘルナンデス記者も「今回のミナシアンGMの決断は格好いいと思った。次に責任を取るのは自分だと、自らその先頭に立ったわけだから」とその決断を称えた。

 ちなみに、マドン前監督は解任を伝えられた日、チームを鼓舞するために、頭部の左右を短く刈り上げて中央部分の髪だけを残す「モヒカン」にしていたという。レイズ指揮官時代の08年には岩村明憲に端を発し、マドン監督やチーム全体にモヒカンカットが波及。ワールドシリーズ進出を果たし「モヒカン旋風」を巻き起こした。披露する場もなく、何とも切ないエピソードだ。

 4月末。キャンプからの出張取材を終え、一時帰国する前にマドン前監督にあいさつに向かうと「次はいつ米国に戻ってくるんだ?待っているよ」と、優しく肩を叩かれたことが忘れられない。その約束がかなわないことは寂しいが、チームは前に進まなければならない。いつかまた取材できる日が来ることを願っている。(記者コラム・柳原 直之)

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