【スポニチ潜入(6)近大・久保玲司】最速151キロ左腕 持ち味は独特フォーム&制球力&ギャップ

[ 2022年6月14日 08:00 ]

桜の木の下で活躍を誓った近大・久保玲司 (撮影・後藤 大輝)

 アマチュア野球の有力選手を紙面、公式サイト「スポニチアネックス」、YouTube「スポニチドラフトチャンネル」において取り上げる「スポニチ潜入」の第6回。近大・久保玲司投手(21)は最速151キロを誇りながら、自らを「技巧派」と自認する左腕。たび重なる故障を乗り越えて手に入れたコンパクトなフォーム、抜群の制球力、そしてギャップが持ち味だ。 近大・久保玲司投手の動画はこちら

 久保は力感なく、スッと始動する。きわめて小さいテークバックで一瞬、左手が体に隠れたかと思うと、直後に切れ味鋭いボールが捕手のミットに収まっている。このギャップが相手打者の意表を突くのだろう。しかも、同じ腕の振りからチェンジアップ、スライダー、カーブを投じる。似たタイプをプロに求めるなら、ヤクルト・石川雅規や元日本ハム・武田勝に近い。いわゆる「打てそうで打てない投手」だ。

 直球の最速は2年秋のリーグ戦で計測した151キロ。それでも本人は「技巧派」と言い切る。球速には全くこだわりがなく、「僕が速い球を投げたとて疲れるだけ」と笑うほどだ。そんな左腕が最も自信を持つ球種は「特に失投がない」と言うチェンジアップ。「三振を狙うより早いカウントで打ってもらいたい。そういう投手を目指しています」。その究極として、「27球完投」を掲げる。

 最大の持ち味は制球力。今春までのリーグ通算22試合10勝5敗、防御率1・55。通算104回1/3を投げ、与四死球13、1試合9イニング換算の平均与四死球率1・12を誇った。半面、狙っていないはずの奪三振率も7・50。こちらは決して突出した数字ではないが、打たせて取る投球を心がけつつ、要所で三振を奪う球威、球種を備えていることを物語る。

 エース格としてカード初戦を担って5勝を挙げ、リーグ優勝に貢献した4年春に最優秀選手、投手ベストナインを獲得した。20年秋から21年秋までのリーグ最優秀選手(近大・佐藤輝明、関学大・黒原拓未、関大・野口智哉)は全員がプロ入りしており、期待もふくらむ。全日本大学野球選手権でも2回戦の亜大戦で8回2/3を3安打2失点と好投。負け投手となったが、結果的には同大会の頂点に立つ東都覇者相手に、実力を誇示した。

 高校時代から痛めていた左肘に1年秋にメスを入れ、2年秋にようやく戦列復帰。長いリハビリ期間中に「投げやすい、を追求した結果」テークバックの小さい今のフォームにたどり着いた。球の出どころが見づらく、タイミングも取りづらいフォームの特性を持つが、「たまたま。ラッキーです」と笑い飛ばす。そして手術後、球速も急上昇したが、本人いわく「理由不明」という。

 1メートル72、67キロ。高校時代に比べて5キロ増量したそうだが、一見しただけでは名門・近大のエース格には正直、見えない。阪神・佐藤輝から寄贈された機器で測定したインボディは83点で「運動していない人みたいな体」と自嘲気味に笑う。ベンチプレスも最高70キロ。一方でデッドリフト210キロ、スクワット210キロと体重の3倍以上の重量を上げる。たび重なるケガで投げられない期間に「ランメニューは誰よりも速くあろう」と心に誓い、来る日も来る日も走り込んだ賜物(たまもの)か、1500メートル走4分30秒前後、50メートル走6秒0と脚力にすぐれ、跳躍力もチームトップクラス。体幹、下半身に力とバネがあり、それが「151キロ」の原動力と言えそうだ。

 2年間、チームメートだった佐藤輝とは紅白戦などで対戦。「5割くらい打たれています」と苦笑する半面、猛虎の4番に「打ちにくい。嫌や」と言わしめたこともある。性格は負けず嫌いでネガティブと自己分析。「常に最悪を想定してマウンドに上がるようにしています」――。決して大きくはないその体に、魅力とギャップが詰まった左腕。視線の先に、プロを見据える。(惟任 貴信)

 ◇久保 玲司(くぼ・れいじ)2000年(平12)6月24日、大阪府守口市出身。藤田小1年から野球を始め、大久保中では準硬式野球部。関大北陽では1年夏から背番号20でベンチ入りし、2年秋からエース。3年夏は4回戦で大院大高に敗戦。近大では2年秋からリーグ戦登板。50メートル走6秒0、遠投100メートル。1メートル72、67キロ。左投げ左打ち。

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