【侍J金メダルへの道】稲葉監督計らいで“仲間”に…密着映画の監督が語る世界一の裏側

[ 2020年2月7日 09:30 ]

映画「侍の名のもとに」のメーンポスターと、監督を務めた三木慎太郎さん
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 【侍ジャパン~2020東京五輪金メダルへの道~映画 侍の名のもとに】稲葉監督就任の17年7月31日から、昨年11月の国際大会・プレミア12初優勝まで。侍ジャパンに密着した専属カメラが捉えたドキュメンタリー映画「侍の名のもとに~野球日本代表 侍ジャパンの800日~」がきょう7日、全国主要都市の映画館で封切られた(一部、後日公開の映画館あり)。10年ぶりの国際大会タイトルとなった世界一の裏側には何があったのか。監督の三木慎太郎さん(53)に聞いた。(取材・構成 後藤 茂樹)

 侍ジャパンのドキュメンタリー映画は、三木さんが手がけた17年7月公開の「あの日、侍がいたグラウンド」に続き2作目となる。17年の第4回WBCまでを追った前作は100時間を超す映像を編集して制作したが、今作ではゆうに200時間を超えた。

 「稲葉監督が非常に撮らせてくれた。仲間として中に入れてくれた。前回はチームの事情もあって、なかなかズケズケと行けないところもあったので」

 代表選手の選考会議にもカメラが入ることを許された。「ここが一番大きいと思います。ナーバスな話ですから。辞退者もいるし、落とす人もいる」。コーチ陣は決して監督のイエスマンではない。選手の評価について、意見が分かれることは何度もあった。時に険しい表情で、何が代表チームに必要なのか、本音のぶつけ合いを撮り続けた。

 プレミア12では俊足を買ったソフトバンク・周東が、2次ラウンド初戦のオーストラリア戦で代走から2盗塁して決勝ホームを踏むなど、大きく貢献した。ただ昨年3月に支配下登録されたばかり。代表トップチームの経験は皆無。「監督も“世間もびっくりするだろうな”と。僕も驚いたけど、監督がそのずっと前から周東に注目していたのは知っていましたから」。サプライズ招集の1年以上前、指揮官が全く無名の22歳の育成選手に目を奪われたシーンも、もちろん押さえている。

 映画を見れば一目瞭然だが、前作との大きな違いはカメラと選手たちの距離感。カメラを回す三木さんに、次々と代表選手が話しかけ、絡んでくる。「そこはありがたかったですね」。前例がなかった前作、撮影当初から全員に受け入れられていたわけではなかった。「最初は、なかなかの壁でした」。チームスタッフに撮影を制止されたことも。前作の実績、そして長く撮り続ける中でチームとして共同生活し、本音や裏側へ迫れる信頼関係を築いていった。

 映画のポスターに使われた1枚のキャプチャー写真。決勝・韓国戦の最後の一球を山崎が投げる直前。この1枚は、実は三木さんのカメラが収めたショットではない。主催者の許可を得てベンチの、ある選手が持つカメラが捉えたシーンだ。「説明しなくても、ちゃんと投手、打者と収めて撮って。凄いですよ」。角度からカメラマン席で撮った画像でないと気付いた複数の関係者から、一体どこで撮ったのか問い合わせも受けた。「撮った本人にも伝えてないから、まさかメーン写真になっているとは知らないと思いますよ」。優秀すぎるサブカメラマンとして三木さんを支えたのは誰なのか。答え合わせは是非劇場でしてほしい。

 その一コマだけでなく、多くの選手、スタッフら関係者の協力があって、今作は完成した。

 鑑賞した稲葉監督からは「ありがとうございました」と感謝を伝えられただけではない。「私も知らなかった部分が本当にたくさん見えた。新たな気付きがありました。これは是非、東京五輪へ向けて参考にさせていただきます」と。

 映画を撮る一番の目的は、お客さんであるファンに侍ジャパンの裏側まで深く伝え、喜んでもらい、何かを感じてもらうこと。ただ、金メダル獲得へ向けてまた一つの力となる、という指揮官の言葉もずしりと響いた。

 「うれしかったですね。東京五輪は大会が始まると規制も厳しくハードルが高いのでどうなるのか分かりませんが、ここまできたら追いかけますよ」

 現在、稲葉監督はプロ野球12球団のキャンプ視察の真っ最中。沖縄、宮崎と精力的に動くその傍らには、常にカメラを手にした三木さんの姿がある。

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2020年2月7日のニュース