大谷、繰り返される議論 「一刀流」か「二刀流」か

[ 2019年7月3日 17:00 ]

エンゼルスの大谷翔平(AP)
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 打率・340、9本塁打、22打点。エンゼルス・大谷の6月に残した打撃成績だ。日本人メジャーリーガーで初となるサイクル安打もマークした。大リーグ公式サイトでは、来季以降も打者に専念する「一刀流」を推薦する特集も組まれたという。

 これだけの数字を残せば、このような議論が起こるのも当然だし、もっと打ちまくれば、「打者・大谷」を推す関係者やメディアは増える。一方で来季「二刀流」として復活し、投手で圧巻の投球を繰り広げれば、逆の意見も噴出するだろう。

 二刀流をやっている限り、永遠に繰り返される話題で、ファンが学校や職場、家庭、居酒屋などで持論を展開して楽しめばいいと思う。

 個人的な感覚だが、大谷が日本ハムからドラフト指名を受け直後には、球界の中では「投手として育成した方がいい」との意見が大半だった気がする。

 打撃の評価が低かったわけではないが、史上初めて高校生として160キロを計測した金の卵に、「打者をさせる」ことに抵抗があったのではないだろうか。

 ただ、日本ハムは違った。160キロを投げる「投手・大谷」以上に、逆方向へ長打のある「打者・大谷」の方を評価していた。だからこそ、「打者」としての可能性を捨てず、前代未聞の「二刀流」にチャレンジすることができた。

 当時の山田政雄GMは「数年やってみて、どうするかは自分で判断するのではないか」と話していたが、3年ぐらいはかかると思っていた「投手」が、予想を超えるスピードで進化。2年目には11勝をマークし、打者としても打率・274、10本塁打を残し、「二刀流」の道がはっきりと見えた。

 栗山監督は大谷の打撃について「大人が少年野球の球場でやっている感じ」と表現していた。とても分かりやすい比喩だと感じた。持ち味ともいえる逆方向のアーチも、大谷ならば引っ張る必要がないというわけだ。

 2015年、大谷の打撃は打率・202、5本塁打と自己ワーストだった。入団3年目で、投手として15勝を挙げたが、打者調整することなく試合に臨むことが多かった。

 そんな反省を生かし、翌16年は打率・322、22本塁打。投手調整の合間に打撃練習を入れたら、これくらいの成績を簡単に残すのが大谷だった。

 二人三脚で「二刀流」を築き上げた栗山監督から、大谷に謝罪する言葉を聞いたことがある。「あいつならば、練習しなくても打てるんじゃないかと思っていた。悪いことをした」。これほど、大谷の打撃を信頼していたのかと驚いたことを今でも覚えている。(記者コラム・横市 勇)

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2019年7月3日のニュース