広島「タナキクマル」 相手チームをかく乱する恐怖の1〜3番

[ 2018年4月9日 09:30 ]

広島・田中
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 【宮入徹の記録の風景】3連覇を目指す広島が順調なスタートを切った。開幕から9試合を消化しヤクルトと首位で並んでいる。ここまでの得点はリーグ2位の48。1試合平均5・3と打線の破壊力は相変わらずだ。中でも田中、菊池、丸は不動の1〜3番を形成。機動力、小技も加え相手チームにとって脅威の存在になっている。普通なら、打線のスポットライトは3、4番あるいはクリーンアップトリオに当たるところ。1〜3番がこれほど、クローズアップされることは珍しい。ただ、2連覇中の3人の活躍ぶりを見れば十分納得がいく。

 過去2年間の広島の先発打順別の安打数は1番田中が16年154、17年164、2番菊池が16年180、17年152、3番丸が16年162、17年171。2年間、3人全てが150安打以上とレベルが高い。このトリオ以前に同一シーズンに1〜3番がそろって150安打以上をマークしたのは49年中日(坪内道典171、原田徳光151、西沢158)、99年横浜(石井琢朗157、波留敏夫168、鈴木尚典178)、03年阪神(今岡誠163、赤星憲広170、金本知憲151)、06年ヤクルト(青木宣親191、リグス153、岩村明憲161)とわずか4例に過ぎない。同じ1〜3番で2度も記録したのは広島だけだ。

 傑出した数字を残す3人だが、田中と丸は2連覇中、全試合に出場。菊池も2シーズン合計の欠場は7試合と怪我に強い。3人がそろって先発したのは16年141試合、17年136試合と計277試合ある。それらの試合の3人の出塁数(相手の失策による出塁も含む)を調べてみた。すると、3人がそろって無出塁に終わった試合は16年4月20日のDeNA戦だけ。昨年は1試合もなく、現在237試合連続で3人のうち必ず誰かが出塁している。3人がそろって出塁した試合は16年は99試合あって73勝25敗1分け(勝率・745)、17年は94試合で67勝25敗2分け、(勝率・728)。2年とも勝率7割超と勝利に直結するケースが目立った。

 このトリオ以外にも鈴木は16、17年と2年連続3割、20本塁打をクリア。今季は故障で出遅れているが、復帰すれば打線のパワーアップが見込める。さらに昨年はエルドレッドが78打点、松山が77打点と規定打席未満の打者が勝負強さを発揮した。過去、規定打席不足で77打点以上は8人と少なく、同一チーム同一シーズンで2人は昨年の広島が初めて。こうした打撃陣の層の厚さが群を抜く得点力を生み出している。

 広島はここ2年間、5月末を単独首位で通過。そして、16年は最終で2位巨人に17・5ゲーム、17年は同じく阪神に10ゲームの大差をつけ独走優勝を果たしている。もし、3年連続で5月末の首位チームが優勝すると、セでは66〜68年の巨人以来50年ぶりになる。今季は田中、菊池、丸がそろって出塁した試合に広島は5勝1敗。だが、1人でも出塁0がいると1勝2敗だ。過去2年間を見ても同じ試合で3人のうち誰かが出塁0だと結果は34勝47敗3分け(勝率・420)と負け越し。「タナキクマル」をどう寸断するのか。他球団が背負う重要な課題といえそうだ。(敬称略、専門委員)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。本社制定の最優秀バッテリー賞の選考委員会には、第1回から27回連続で資料説明役として出席。

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