腕が振れ過ぎるって?

[ 2018年4月9日 18:18 ]

記録ラッシュとなった大谷(AP)
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 【伊藤幸男の一期一会】エンゼルスの大谷翔平投手(23)が8日(日本時間9日)のアスレチックス戦であわや完全試合の快投を演じた。3試合連発に、文句なしの2勝目。二刀流として無限の可能性を信じるからこそ、個人的には大記録が途絶えての降板に少しホッとしている。北海道赴任時代、日本ハム・栗山英樹監督(56)と交わした何気ない会話を思い出したからだ。

 「翔平は試合でも練習でも腕が振れ過ぎる。だから我々はコンディションには万全を期している」。私は思わず聞き返した。「エッ?投手としては文句ないじゃないですか」。

 「確かにそう。ただ翔平の場合は少し違う。投手と野手並行して実戦へ調整しているんだから、一番怖いのは故障なんだ」。栗山監督は平然と答えた。自軍投手の「腕の振れ過ぎ」を指揮官がケアするのは、恵まれすぎた資質ゆえの悩み。同時に日本ハムスタッフが試行錯誤の末、たどりついた「二刀流調整法」のチェックポイントの一つだった。

 投手が制球難に陥ったとき、首脳陣は決まったフレーズを繰り返す。「打たれてもいいから腕を思い切り振れ」。ところが165キロ右腕の場合は「常識」に当てはまらない。並の投手とは明らかに次元が違う。だから飛ばしすぎないよう、体調管理に万全の配慮を払う。「腕が振れ過ぎるから心配」。この日も奪三振に比例し投球数が増えるごとに、ヒヤヒヤしたのは私だけではないだろう。

 古びた映像と本でしか見たことがないベーブ・ルースの快挙に挑む大谷。日本ハムに入団した12年12月から賛否両論で盛り上がった二刀流が米国でも再燃するのは当然だろう。だって1世紀に及び、誰も挑戦しなかった「領域」を超えようというのだから。ただ私は、エンゼルスが日本時代の調整法をメジャー流にアレンジし起用し続ければ夢物語ではないと信じている。「無事之名馬」―。世界最高峰のMLBでも階段を上り始めた大谷がシーズンを通じて活躍することを祈りたい。(専門委員)

 ◆伊藤 幸男 1959年6月8日生まれ。84年スポニチ入社。アマ野球、巨人担当。北海道総局勤務を経て現在に至る。

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