楽天・栗原 広島を「倒したい」…1軍での“恩返し”へもがく日々

[ 2016年6月8日 10:30 ]

2軍で調整を続ける楽天・栗原

 器用な生き方は、できないのかもしれない。ワイルドな風ぼうと、豪快な打撃。広島時代のニックネームは「コング」だった。楽天・栗原の明るい笑顔は人を魅了する。34歳。2軍生活で真っ黒に日焼けしたベテランは、若手と一緒に必死に打球を追い、懸命にバットを振り続ける。昔も、今も。その姿はずっと変わらない。

 「チームにはすごい馴染めてます。でも…。1軍で結果を出すことで、本当の一員になれる。まだ(楽天に)入っただけ。仕事をしてないんです」。16年間在籍した広島を退団し、昨年11月にテスト入団。しかし、生まれ故郷・東北の新天地では、もどかしい日々が続く。今年3月15日。同じく新加入の今江と入れ替わりで2軍での調整に回った。その初日に、右ふくらはぎを肉離れした。

 「思った以上に治るまで時間がかかって…」。実戦復帰まで約2カ月を要した。5月12日DeNA戦(仙台市泉)に「5番・DH」で出場。同26日ヤクルト戦(戸田)では「移籍1号」となる本塁打も放った。しかし、ここまで13試合で打率・143と低迷。何とか浮上のきっかけが欲しい。もがき苦しむ中、栗原にとって「運命の週末」がやってきてしまった。

 10~12日。本拠・コボスタ宮城では広島3連戦が行われる。一方で2軍は11、12日と山形県天童市でヤクルト2連戦。そう、栗原の生まれ故郷だ。「確かにファームの試合は地元です。でも…。本当は1軍に上がってカープと、という思いは強いですね」。そして、無骨な男は続けた。「倒したいんです」――。元気な姿を、豪快な打撃をかつてのチームメートに、何より広島ファンに見せたい。そのためには、ただひたすらにバットを振るしかないのだ。

 世界一連覇を果たした09年のWBC。村田(横浜)が右大腿部を肉離れし、緊急招集されたのが栗原だった。準決勝からチームに合流して3泊5日の弾丸日程。2月の代表候補合宿では、一度は「落選」した身だった。同22日。落選通達後、一人で居残り特打を行う姿があった。その心意気を、侍ジャパンの原監督は買った。後日、指揮官は巨人の選手を集めて「あの姿勢は素晴らしい」と話して聞かせたという。

 栗原は言う。「僕にとっては、普通のことをやっただけなんです」。今も黙々と、普通のことを繰り返す。これでもかとバットを振る。一日も早く、1軍の晴れ舞台に戻るために。(鈴木 勝巳)

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2016年6月8日のニュース