送れぬ北條 バントの「義務感」が重圧、悪循環に

[ 2016年6月8日 09:30 ]

<ロ・神>3回表無死一、二塁から北條のスリーバントは二塁走者が三塁封殺になる失敗

交流戦 阪神1-2ロッテ

(6月7日 QVC)
 【内田雅也の追球】野球批評家とされた草野進が文芸誌『海』(中央公論社)で<二番打者を義務感や原罪意識の暗さから解放しうるイデオロギーが必要だ>と書いたのは1983年(昭和58)のことだ。もう33年も前の話である。

 当時「革命的」とも評された草野の野球批評は今も通用するのではないか。2番打者の<義務感>や<原罪意識>とは“自分を殺して、塁上の走者を進める”という伝統的な犠牲精神を指す。

 当時からいわゆる「攻撃型2番打者」は試みられてきた。たとえば昨季セ・リーグ優勝のヤクルトには犠打わずか2個で最多安打のタイトルを獲った川端慎吾がいた。

 金本知憲を監督に迎えた今季の阪神も基本的に試合前半は無死の走者をバントで送る作戦は採らない。チーム犠打28個はセ・パ12球団でヤクルトの25個に次いで少ない。

 統計的に無死一塁からバントで送るよりも、打たせた方が平均得点が高いとの裏付けもあるのだろう。その金本も(状況によるが)無死一、二塁はバントである。

 だが、この夜は打たせても、送らせても、走者が進まず、1点差で敗れる要因となった。先発の石川歩に7回途中まで10安打を浴びせながら1点という拙攻だった。

 1回表無死一塁で北條史也に打たせて三振。3回表無死一、二塁では北條がバント失敗(投ゴロ三封)。6回表無死一、二塁での狩野恵輔がバント失敗(ファウル)の後に三振に倒れていた。

 「バントやね」とヘッドコーチ・高代延博は端的に敗因を口にした。

 5日の西武戦(甲子園)にも高山俊が無死一、二塁でバント失敗、1点差で敗れている。“もう失敗はできない”との重圧がミスのチーム内伝染を呼んでいる。

 「そりゃあプレッシャーはあるやろうけどね」と高代は言う。「しかし、北條はそういうことができないといけない打者だからね」。伝統的な2番打者タイプであり、バントや進塁打など小技が求められる。余計に草野が指摘する<義務感>が重圧となる。走者を進められなければ、罪の意識が深まり、また重圧が高まる。悪循環である。

 高代は「チームとして反省せんといかんね」と個人でなく全体の問題としてとらえた。<イデオロギー>の問題である。

 今は二十四節気の「芒種(ぼうしゅ)」。種まきの季節だ。秋の実りに向け、技も心も植え付ける時期なのだろう。 =敬称略=(スポニチ編集委員)

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