1人で春秋連覇支えた早大データ班・佐藤「自分のできることで貢献」

[ 2015年11月2日 07:15 ]

東京六大学・早大データ班の佐藤達

東京六大学秋季リーグ戦 早大2─0慶大

(11月1日 神宮)
 たった1人のデータ班が、早大の春秋連覇を支えた。昨年から専任で分析を担当する佐藤達(4年)だ。リーグ最多45度目の優勝に沸く仲間の姿を「本当に良かったです」と見つめた。

 東京・高輪高出身。高校時代は内野手兼投手で3年夏は東東京大会初戦で敗れた。「勉強ばかりになるのは嫌だなと思って、スポーツのことも勉強できる早稲田を目指した。早稲田に行くなら野球部にも入ろうと。一般入学の選手も活躍していたので」と現役で早大に進んだ。

 ただ、周囲は甲子園経験者も多く、高いレベルを目の当たりにした。「4年間選手として練習したというのは自己満足になってしまう。ならば、自分のできることでチームに貢献したい」と2年の終わりにデータ班に立候補した。「最初はパソコン操作が慣れなくて、その分すごく時間かかった」と振り返る。

 03年に発足した早大野球部のデータ班は代々、学生コーチらが兼任して2人体制を敷いてきた。佐藤の就任時は1年上の先輩に作業を教えてもらいながら仕事を覚えた。先輩が卒業すると後輩の担当がおらず、1人担当となった。

 下級生が撮影してきた対戦相手の映像を分析。投手の球種や球速、クセを始め、捕手の送球タイム、野手の足の速さなどの計測に始まり、シーン別に編集して各選手のスマホに送ったり、ミーティング用の資料作成などを行う。他校が最大5、6人で担う作業をすべて1人でこなす。現役最多の39盗塁を決めた巨人ドラフト2位の重信から「ランナー一塁からの徒手の投球動作映像を全部ほしい」などとリクエストが来れば、細かく応える。優勝した6月の全日本大学選手権中は連戦のため、徹夜で分析した。安部寮のデータルームでひたすらパソコンに向かう地道で孤独な作業。「いくらでも手は抜けるけど、手を抜いたら他にやる人がいない。自分との戦いだった。メンタルが強くなりました」と笑う。

 うれしいのは「選手に映像のおかげと言われた時」だ。正捕手・道端は「夜中の3、4時まで作業していたりすると、昼間に連絡してもまだ寝てたりしますね」と苦笑いしながら証言。それでも「困った時、決断する自信になる。達がいなければここまで来れなかった」と感謝の言葉を惜しまなかった。

 卒業後は証券会社に就職予定。「社会に出たら一プレーヤーとして頑張りたい。同期には負けたくない」と力強い。「データを生かしてくれる選手がいるから、僕がここにいる意味がある」。東京六大学史上初の4冠達成に王手をかけ、佐藤もナインとともにもう一踏ん張りだ。

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2015年11月2日のニュース