ベンチからエース支えた前川主将 笑顔と涙の初打席

[ 2010年8月20日 06:00 ]

<九州学院・東海大相模>6回裏2死二塁、九州学院の代打・前川は遊ゴロに倒れベースを叩いて悔しがる

 【夏の1ページ 九州学院3-10東海大相模】まさかこんな形で打席に立つなんて。6回2死二塁。九州学院の背番号12、前川主将は急きょブルペンから呼ばれた。代打だ。負傷したエース渡辺に代わる打席は、この夏初打席だった。

 「おまえが一番悔しいんだ。政孝(渡辺)、絶対に打ってやるぞ」

 渡辺とは大矢野中からバッテリーを組み、甲子園を夢見た仲。でも、昨夏の新チームで背番号2は1年下で坂井監督の次男・宏志朗、控え捕手に回る前川が担ったのは主将だった。正直、思いは複雑。試合で渡辺の球を受けたい。そんなとき坂井監督が言った。「自分のレギュラーポジションを見つけろ」。裏方に徹する決意を固めた。

 渡辺の球を受けるのはブルペンだけ。1、2年生の多いチームで自ら雑用を買って出た。「ここに連れて来てくれただけで数え切れない夢をもらいました」。アルプス席の母・千里さん(48)はうれしそうに笑う。

 最初で最後の甲子園の打席。遊撃へ放ったヒット性の打球は好守に阻まれた。一塁へヘッドスライディング。泥だらけで言った。「ベンチでも政孝の球を捕ってるつもりだった。あいつとはずっとバッテリーです」。笑顔と涙。涼風が優しくほおをなでていった。

 ≪渡辺負傷も全員野球見せた!≫九州学院のチーム全員の思いが1つになった。6回2死、熊本大会から全10試合に登板し、9完投のエース渡辺が左手首に打球を受け、その裏の打席で代打を送られて交代。「(渡辺)政孝の分まで執念を見せよう」という坂井監督の言葉に奮起し、8回に一二三に5安打を浴びせて3点を奪った。ベンチ入りメンバー18人全員を使い切った指揮官は「総力戦で1点を取りに行った」とうなずいた。スタメン中、1、2年生が5人。初の4強入りは逃したが、1年生4番の萩原は「あと4回来る」と言葉に力を込めた。

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2010年8月20日のニュース