鈴木尚 引退試合で有終サヨナラアーチ!

[ 2009年3月23日 06:00 ]

<横・巨>横浜ナインに胴上げされる鈴木尚典

 【横浜3―1巨人】昨季限りで現役を引退した横浜の鈴木尚典外野手(35、現2軍育成コーチ)が22日、引退試合となった巨人とのオープン戦(横浜)で本塁打を放ち有終の美を飾った。3回に代打でグライシンガーの直球を右翼席上段に運んだ。横浜一筋18年、通算1456安打の“ハマの安打製造機”。今後はスイッチを切り替え“尚典2世”の育成に全力を注ぐ。

【オープン戦結果
横浜グッズ


 “ハマの安打製造機”はさびついていなかった。代打で登場した3回に劇的なドラマは起こった。2年連続最多勝のグライシンガーの内角直球を振り抜くと白球は横浜ファンで埋まる右翼席上段に一直線で飛び込んだ。
 「練習もしていなかったし、打った自分が一番びっくりした。またやりたくなりました。打席に立ったときのファンの声援は一生忘れない」
 球団からの引退試合の提案を一度は固辞したがファンの熱望を受けて承諾した。昨オフにコーチに就任したため日本野球機構(NPB)と巨人の許可を取り付け“特例”で出場。昨年のユニホームに現役時代の背番号51(現在は86)をつけ豪快なスイングを披露した。雨のため5回コールドとなったが、大矢監督も「あいつは打つのが好きだからね。ファンにも最終打席で喜んでもらえたと思う」と目を細めた。
 寡黙な性格だがチームメートとファンを誰よりも大切にする選手だった。チームが最下位に低迷していた昨年5月上旬に2軍降格した際に「落ちたショックはあったけどまた戻ってくる。それまではみんなに頑張ってほしいから」と激励の手紙を各選手のロッカーに置いた。引退後も「ファンのイメージもあるし、ユニホームを着たときに体形が変わらないように気をつけたい」と腕立て伏せと腹筋を欠かさず、オフには故郷・浜松の砂丘を走るトレーニングを継続。現役時代の88キロをキープした。実直な男に神様は最高のプレゼントを用意していた。
 第2の野球人生は“尚典2世”の育成に全力を注ぐ。「横浜高の3年をあわせて21年間お世話になった横浜が大好きです。これからはチームが強くなるために自分より凄い選手を送り出したい」。涙はない。引退セレモニーの表情は晴れやかだった。

続きを表示

2009年3月23日のニュース