仏撃破のキーマンは3番!WOWOW解説の大野均氏がラグビー日本―フランス戦を徹底展望

[ 2022年11月18日 11:00 ]

WOWOWの日本-フランス戦で解説を務める田中史朗(左)と大野均氏
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 ラグビーの秋のテストマッチシリーズ「オータムネーションズシリーズ」は、いよいよ後半戦に突入する。世界ランキング10位の日本代表は、12日のイングランド戦に敗戦。テストマッチの連敗が4に伸びる苦しい状況の中、20日には22年の最終戦として同2位のフランスと対戦する。

 WOWOWではこの試合を、20日午後9時30分からWOWOWライブで生中継するほか、WOWOWオンデマンドでもライブ配信する。解説を務めるのは元日本代表の栗原徹氏に、W杯3大会連続出場のSH田中史朗(東葛)、同じく3大会連続出場で歴代最多の通算98キャップを誇る元代表ロックの大野均氏(BL東京アンバサダー)。注目の一戦を前に田中、大野氏がイングランド戦の振り返りやフランス戦の展望を語った。

 ――まずはイングランド戦の率直な感想をお願いします。

 田中「日本はミスもありましたが、そこまで悪い状態ではないと見ています。それ以上にイングランドのプレッシャー、またアウェーでの周りからの応援の力もあってこのような結果になったのではないかと思います」

 ――日本代表の良かった点を挙げるとすればどのあたりでしょうか?

 田中「ラインアウトからのモールディフェンスはしっかりできていましたし、(押されていた)スクラムも後半1本取り取り返すなど、要所要所で良い部分がありました。ただ、全体的に相手のディフェンスのプレッシャーを受けてミスが多く出てしまったことが敗因だと思います。それでも後半、イングランドが少し疲れてきた時には日本もしっかり対応できるようになり、いいスピードでアタックを継続できていましたので、もう少し相手を疲れさせることができればもっと得点できたでしょう。いずれにしても敵地で厳しい試合を経験したこと自体が日本代表の大きな収穫です。若い選手も出場して、来年のW杯へ良い予行演習になったと思います」

 ――特にいいパフォーマンスをしていた選手を挙げていただけますか?

 田中「フランカーのリーチ・マイケル選手はアタックでずっと継続して前に出ていました。非常に良かったです。あとは両スクラムハーフ(流大選手、斎藤直人選手)ですね。いいテンポでボールをさばいていたことに加えてサポートの面も素晴らしく、斎藤選手はトライを取ってくれました。本当にレベルの高い、世界的なスクラムハーフの2人だなと思います」

 ――バックス全体についてはいかがでしたか?

 田中「全体的に個人でラグビーをしてしまっていた印象があります。チームで動いてトライを取るのが本来の日本のスタイルです。イングランド戦はそういう場面がなく、たとえばセンターのディラン・ライリー選手が1人で抜けてもその後のサポートが続かずミスして終わってしまったり、キックから簡単に相手ボールにしてしまうというシーンが多く見られました。また、流選手や斎藤選手が常に声を出していたのに対して、スタンドオフの選手が少し静かだったようにも感じましたので、チーム全体でもっとコミュニケーションを取ってプレーしてもらいたいです」

 ――フランス戦ではどのあたりが重要になるでしょうか?

 田中「イングランドには敗れましたが自分たちを見つめ直して、しっかり相手を見てプレーしてほしいですね。フランスは個人個人が強く伝統のシャンパンラグビーが復活してきたように感じますので、1人1人がしっかりタックルすること、そして確実にボールをキープすることが大事だと考えています」

 ――解説には元日本代表の大野均さんもいらっしゃいます。

 田中「楽しみですね。大野さんはあまり多くを語らない方なので、解説でどんなことを話してくれるのか今から待ち遠しいです」

 ――今回の開催地、トゥールーズの街とスタジアムの印象をお願いします。

 大野「街中にTOP14のトゥールーズのチームエンブレムが掲げられていて、街を挙げて応援しているのが伝わってきます。ラグビー関係者としては凄く居心地のいい街ですね。会場のスタジアム・ドゥ・トゥールーズには07年W杯のフィジー戦でグラウンドに立ったのですが、客席との距離が近いのでお客さんは直にラグビーの魅力を感じることができると思います。選手にとってもお客さんの応援が励みになる、そんなスタジアムです。そのフィジー戦で『ジャポン』コールをもらったのはいい思い出ですね」

 ――その大舞台に立つ日本代表の、イングランド戦を踏まえての課題、収穫をそれぞれお願いします。

 大野「やはりホームのイングランドは強かったな、という印象です。日本代表は単純なハンドリングミスが多く、特に前半はスクラムでのペナルティも多くなりました。ただ、ボールをハイテンポで出して継続する本来の日本代表のアタックが世界に通じることはすでに確認できていますし、今はラインアウトもチームの強みになっています。前半はやられたスクラムも後半にはしっかり立て直していましたので、修正能力も付いてきているなと感じています」

 ――日本代表と東芝ブレイブルーパス東京のロックの後輩にあたるワーナー・ディアンズ選手のパフォーマンスはいかがでしたか?

 大野「20歳にしてあのような高いレベルでしっかりとプレーできているので、本当に頼もしいです。キックオフやラインアウトでは彼がいることによって彼の高さそのものが日本の武器になります。特にラインアウトではアタックだけでなくディフェンスでも相手に強くプレッシャーをかけていました。あの体格で低いプレーもできますので、今後ますます成長が期待できる選
手だと思っています」

 ――長年ともに過ごしてきたフランカーのリーチ・マイケル選手についてもお願いします。

 大野「34歳になった今でもこれだけ素晴らしいプレーを見せてくれていますので、本当に頼もしいです。やはりチームの大黒柱ですし、彼自身も今とても充実していると思います。19年W杯終了後に体のメンテナンスをして、それを経てハードトレーニングを継続してできていることが今のパフォーマンスの向上につながっているのではないでしょうか」

 ――他にも期待されている選手がいればお願いします。

 大野「たくさんいますが、バックローの姫野和樹選手は引き続き世界に通用するフィジカルで貢献してくれています。あとはセンターのディラン・ライリー選手です。23年W杯まであと10カ月ありますが、まだ若いのでさらに成長するのでないかと思います」

 ――いよいよフランス戦です。試合のポイントとなるのはどのあたりでしょうか?

 大野「キックでプレッシャーを掛けてくる相手の戦略に対していかに修正できるか、そしてイングランド戦でやられてしまったスクラムでどれだけ事前に準備できるか、この2点に注目しています。フランス戦では前半からスクラムでやられないようにしっかり対応してほしいですし、そういう意味では、フランスにどう対応するかということ以上に、日本代表がやりたいラグビーをさらにブラッシュアップすることが大事だと思います」

 ――今のフランスの印象についてもお願いします。

 大野「一部メンバーの変更はありそうですが、世界トップのチームであることに変わりはありません。そんなフランスに対して今の日本代表の力がどこまで通用するのか、非常に楽しみにしています。また、フランスはスクラムに世界一こだわっているイメージがありますので、日本代表が特にディフェンス時のスクラムでいかに相手からのプレッシャーを抑えられるか、という点にも注目しています。その意味では日本代表の3番の選手が鍵になりそうです」

 ――今年渡仏した際に会って話をされたスタンドオフのロマン・ヌタマック選手についてはいかがでしょうか?

 大野「プレーを見ていてもしっかりとフランス代表をコントロールしていることがわかりますし、彼がいることでチームが落ち着いてプレーできているのだろうと感じています」

 ――今回は田中史朗選手、栗原徹さんとのトリプル解説です。最後に解説への意気込みをお願いします。

 大野「田中選手とは久しぶりに会うので、解説を楽しみたいと思います。同期の栗原さんはラグビーの知識が豊富です。私も一緒に見ながら勉強させていただきたいと思っています」 

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