【東京五輪あと1年 二宮清純氏直撃に森喜朗会長激白(4)】災い転じてレガシーに、日本モデル示せ

[ 2020年7月23日 07:03 ]

五輪開会式まで「365日」となった、JR東京駅前のカウントダウン時計
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 新型コロナウイルスの影響で来年へ延期となった東京五輪は23日、開幕1年前を迎える。史上初の延期に伴う追加経費や大会の簡素化、コロナ対策など多くの課題を抱える五輪は1年後、無事に開催できるのか。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)を、スポニチ本紙コラム「唯我独論」でもおなじみのスポーツジャーナリスト二宮清純氏(60)が直撃した。(構成・スポーツ部専門委員 中出 健太郎)

 二宮 来年7月実施か再延期か、中止か。IOCの最終的な決定はいつ頃になりそうですか。

 森 やっぱり春頃には判断していかないといけないと。

 二宮 来年の3月。遠藤さんが言ったような。

 森 薬にしたって、これでいけるんじゃないか、というものがないわけじゃない。ただ、国によってちょっと違うから。これはどこかで合意するしかない。

 二宮 やはり最後はワクチンと。

 森 中止したらえらい金になっちゃうし、もう1年延ばすというのはよほどのことじゃないと。五輪をもういっぺんやるぐらいの金がかかるでしょう。

 二宮 それでは都民、国民の理解は得にくい。

 森 要は、簡素化は言うは易し、行うは難しということ。基本的にはIOCが五輪そのものを思い切って、どこまで縮減化していけるか。IOCがやるべきことで、もう9割できてしまっているものを削れとか減らせというのは不可能な話。選手を半分にしろってIOCが決めるなら、思い切って何億という金が節減できる。私は、この機会に五輪とはかくあるべしということを日本が提言しろとみんなに言っている。我々が次(五輪を)やらせてもらったら、このぐらいのことはやるという気持ちで提案をして、検討してほしいと言った方がいいと。

 二宮 それがレガシーになると。

 森 現に、五輪とパラリンピックを一緒にやっていこうというものを残している。IOCも財政のことを強調したり、実際にそういう方向性を見せようとしている。だから、日本からこういう提案があったというのを、世界から共感を得られるように、議論もしていけたらいいなと思っています。それが我々の責任だと思ってます。

 二宮 コロナ禍を「災い転じて福となす」とするということですね。IOCにも危機感を共有してもらいたいと?

 森 今回は日本から言って5競技増やしてもらったんだけど、新競技をつくる時はスクラップ&ビルドで、増やすならいくつか減らさないと。その国にはない施設を新しく造ってまでやらなきゃならんのだったら、やらない。そういう意味で五輪を簡素化していくと。主催の国が主体性を持って決められるか、だと思いますね。

 ◆森 喜朗(もり・よしろう)1937年(昭12)7月14日生まれ、石川県出身の83歳。早大ではラグビー部に4カ月間所属。新聞社勤務、議員秘書を経て、69年の衆議院議員初当選から14期連続当選。自民党三役(幹事長、総務会長、政務調査会長)、文相、通産相、建設相などを歴任し、00年4月に第85代内閣総理大臣に就任。12年に議員を引退した。14年から東京五輪・パラリンピック組織委員会会長。日本ラグビー協会名誉会長。

 ◆二宮 清純(にのみや・せいじゅん)1960年(昭35)2月25日生まれ、愛媛県出身の60歳。フリーのスポーツジャーナリストとして五輪は過去に8回現地取材。スポニチ本紙では00年シドニー夏季五輪、02年ソルトレークシティー冬季五輪、04年アテネ夏季五輪で観戦記を執筆し、毎週水曜日付で「唯我独論」を好評連載中。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」「最強のプロ野球論」「歩を『と金』に変える人材活用術」(羽生善治との共著)など著書多数。19年から広島大学特別招聘(しょうへい)教授も務める。

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