大技の佐藤&完成度の鍵山 男子フィギュア界で注目のライバル関係

[ 2019年2月11日 11:45 ]

<全国中学校スケート大会>優勝し佐藤駿は観客の声援に応える(撮影・荻原 浩人)
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 2月5日まで長野市で開催された全国中学スケート大会フィギュアスケート男子で、異次元のバトルが行われた。初優勝を果たした佐藤駿(15=埼玉栄3年)は合計215・23点。鍵山優真(15=神奈川FSC、神奈川・六角橋中3年)も214・38点の高スコアで、0・85点差という熱戦だった。

 SPからの首位を守った佐藤はフリーで2度の4回転ジャンプに挑戦した。冒頭の4回転トーループを成功させ、4回転―3回転の連続トーループに着氷。「4回転は難しいけど、好きなジャンプ」。後半には3回転半(トリプルアクセル)―2回転トーループの連続技も決め、技術点は全体トップの81・13点。フリー146・61点(2位)で逃げ切った。

 仙台市出身。5歳からスケートを始め、五輪連覇の絶対王者・羽生結弦(24=ANA)も育ったアイスリンク仙台が拠点だった。憧れの存在から助言を受けるなど充実した日々を過ごしたが、11年の東日本大震災で被災。「(家が)結構、壊れた」という。仙台から埼玉県へ拠点を移し「仙台で教わったことを生かすよう頑張っている」。その成果が全中制覇という結果に表れた。

 過去に羽生も立った全中の表彰台の頂点。「これで終わりではない。優勝したとはいえ、取りこぼしがある」と引き締め「演技の加点やスケーティングも伸ばしたい。4回転はトーループの確率を上げて、サルコーに持っていきたい」と先を見据えた。

 準優勝の鍵山はフリーでトリプルアクセルを2度組み込んだ。1発目は2回転トーループもつけ、完璧に決めた。練習で成功させている4回転は回避したが、伸びやかなスケーティング技術でNHK大河ドラマ「龍馬伝」を演じた。優勝こそ逃したが、演技構成点で70・48点をつけ、フリーではトップの148・11点。「ジャンプだけじゃなく表現力も磨いてきた。磨いてきた部分を出せてよかった」と強調した。

 父は92年アルベールビル、96年リレハンメル両五輪代表の正和さん。父の映像だけでなく、現在過去問わず「日本人や海外の選手の演技を見て勉強している」と言う。「4回転を演技に入れると他のジャンプが崩れる可能性もある。1つ1つのジャンプを完璧に跳びたい」。総合力で勝負している。

 大技の佐藤と、完成度の鍵山。ともに日本スケート連盟の強化指定B選手だ。同学年のライバル関係で、オセロのように勝敗を繰り返す。佐藤は「かなり刺激になる。優真はどんな状態でも必ずノーミス。優真みたいにもっと演技がうまくなりたい」と語り、鍵山も「とてもいいライバル。4回転ジャンプがとても凄い」と意識している。

 佐藤は同郷の大先輩から、鍵山は父親から大きな影響を受け、歩を進めている。「具体的な目標はオリンピックで優勝」と佐藤。2人とも、まだ15歳。無限の可能性を秘める2人の切磋琢磨が、日本男子フィギュア界の未来をつくっていく。(大和 弘明)

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