7人制ラグビー 理解しがたい監督の「退任理由」

[ 2018年5月23日 12:54 ]

ダミアン・カラウナ氏(JRFU2016提供)
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 これではあまりに、前任者の苦労が浮かばれない。

 21日に7人制ラグビー男子日本代表の新しいヘッドコーチ(HC)が発表となり、6月1日付けで男女7人制総監督を務める岩渕健輔氏の就任が決まった。16年11月1日付けでHCに就任した前任者のダミアン・カラウナ氏は、5月31日の契約満了に伴い退任する。もちろん16年リオデジャネイロ五輪から20年東京五輪という4年のスパンで考えれば、事実上の解任と解釈していいだろう。

 先にポジティブな点を挙げておく。岩渕氏と言えば日本協会切ってのらつ腕であり、15年W杯までは15人制男子代表のゼネラルマネジャーとして手腕を発揮した。早くからスーパーラグビーへの参戦を提唱し、そのための活動もしてきた人物だ。記憶をたどれはW杯イヤーの15年から、女子7人制代表でスポット的に現場指導。思い出すのが男子が4位と好成績を残したリオ五輪後の、ある協会幹部の言葉。「岩渕を現場に投入していなかったら、どうなっていたか」。一歩引いて言わせてもらえば、ぜひ東京五輪ではメダルを、という期待できる人選だと感じる。

 しかし一方で、カラウナ氏の退任理由については、納得できなかった。まず日本協会の坂本典幸専務理事の弁。「(前略)上を目指すには(日本ラグビー界の)事情を知った日本人コーチで、企業とより良好な関係を保ちながら、選手の技術、精神面をより理解できる人間がふさわしいのではないか」。正気で言っているならば、来年の15人制W杯がいささか心配になってくる。ジェイミー・ジョセフHCの職も解き、日本人HCを新たに就けるべきではないか。

 会見で坂本氏、男女総監督の立場で臨んだ岩渕氏も語ったように、そもそも7人制男子代表の苦戦理由は、15人制で行われるトップリーグ(TL)が人材のベースになっているという点が大部分を占める。主要な大会がTlシーズンと重複し、選手の確保すらままならない状況は、リオ五輪前年まで変わらず、五輪後は再び元に戻った。カラウナ氏にとって初采配となった16年12月のセブンズシリーズ開幕戦ドバイ大会。メンバー12人に五輪代表は1人もいなかった。このような状況で結果を残せというのが酷というものだろう。

 日本でのプレー経験があるとは言え、日本のラグビー事情や企業文化を深く理解していないであろう人物をHCに迎えたのだから、当然周囲がサポートする必要があった。この点は坂本氏も「結果的にはサポートできなかったということになる」と認めている。だとしたら責任を取るべきは、男女7人制強化委員長の本城和彦氏や、日本協会の担当者ではないのか。「総監督」の職域はやや曖昧だが、岩渕氏も無関係ではないはずだ。

 カラウナ氏の指導力や成果を直接的な言葉で低評価してしまうと、同氏の今後の指導キャリアに悪影響を及ぼす。日本協会にはそれを回避する意図もあっただろうが、釈然としない思いは残った。現場指導者だけに責任を取らせる。このような協会の求めに応じ、コーチ職に就く外国人指導者は、今後出てくるのだろうか。(阿部 令)

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