隠ぺい、忖度、ハラスメント…日大選手会見で顕在化した現代社会の病巣

[ 2018年5月23日 08:00 ]

会見を行った宮川選手(AP)
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 大学アメリカンフットボール界で起きた悪質反則問題は22日、反則タックルを仕掛けた日大選手が実名を公開して謝罪会見。その模様をNHKや民放各局が生中継する重大な関心事に発展した。中継時に公共放送がニュース速報を流すほどの異例の事態。なぜ、そこまで問題は広がっていったのか。その背景を探った。

 NHKは「ごごナマ」の放送時間を短縮して、午後2時45分の会見開始に合わせて急きょ生中継。ワイドショーの放送帯に重なった日本テレビ、TBS、フジテレビも生中継した。反則タックルをした日大の宮川泰介選手(20)が顔を公開して実名で激白したことによって、世間的な関心事としての報道価値は一層高まった。

 宮川選手が反則タックルの経緯を説明した直後の午後3時8分、NHKが「前監督・コーチが反則行為を指示と明言」とニュース速報。フジもほぼ同じタイミングで「井上コーチなどからの指示と明言」とテロップを流した。

 なぜ視聴者が見ている生中継でわざわざニュース速報を流したのか。NHK広報局は「中継などで同じ内容を放送している時でも、より視聴者に注目してもらうために、テレビ画面に速報を表示している」と説明。総合テレビに加え、BS1にもテロップが表示されたという。

 2月の平昌五輪中継で、中継局が日本選手のメダル獲得直後にテロップを流したのは記憶に新しい。だが、国内競技人口約2万人とされるアメフットで、しかも大学の無名選手の会見が同格の扱いになるのはきわめて異例の対応だ。

 問題は今月6日の試合後から日を追うにつれて“重大化”していった。ジャーナリストの大谷昭宏氏(72)は「大人の思い切りの悪さ」が引き金になったとした上で「日大側が最初から真相を明らかにしなかったことで、同じ映像がテレビで繰り返し流れて肥大化していった。こじらせた病気が大病になったようなものだ」と語った。

 今回の会見では「隠蔽(いんぺい)」「忖度(そんたく)」「ハラスメント」など現代社会が内包する病巣が顕在化した。放送業界からは「今や社会問題だ」との声も聞こえてくる。ツイッターなどSNSでも映像が拡散。その速度に追いつけず日大は後手後手の対応を余儀なくされた形だ。

 大谷氏は「加害者ではあるが、宮川選手が事態を解決しようと決断したことは評価できる」とした上で、日大に危機管理学部があることにも触れ「一体、何を教えているのか。彼を学部の講師に招いた方がいいのではないか」と批判した。

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