【内田雅也の追球】梅野への質問をはぐらかした岡田監督の「戦犯」つくらぬ問答

[ 2023年4月24日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1-2中日 ( 2023年4月23日    バンテリンD )

<中・神>9回1死一、二塁、併殺打に倒れた梅野(撮影・岸 良祐) 
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 試合終了から40分以上たって、ベンチ裏通路に出てきた阪神監督・岡田彰布は記者団を目にすると「おう」とうなずき少し笑った。悔しいはずの1点差敗戦の後、コーチ会議を行い、ユニホームから背広に着替え、どこかさっぱりしていた。

 采配での疑問は、1点を追う7回表2死二、三塁で打順が回った梅野隆太郎に代打はなかったか?という用兵である。

 何しろ梅野はこの打席を迎える時点で打率・106(47打数―5安打)、得点圏打率・091(11―1)と電光掲示板で光っていた。連続10打席、安打がなかった。

 梅野をそのまま打席に送り、一打逆転の好機は空振り三振で去った。

 さらに9回表1死一、二塁でも打席が回ったが二ゴロ併殺打。GEDP(ゲーム・エンディング・ダブルプレー)で名誉挽回はならなかった。

 さて、梅野への代打について岡田は「いやあ、もう(代打を)使うてしもうて、おれへんかったんや」と言った。問いかけは7回表の場面だったはずで、この時はベンチに原口文仁や渡辺諒が残っていた。岡田はとぼけたように、9回表について答えていたのである。

 自身が現役晩年を過ごしたオリックスで監督だった「魔術師」仰木彬や阪神を2度優勝に導いた「伊予の古だぬき」藤本定義のような、おとぼけ回答を思わせる。そして「まあ、でも、こういうゲーム展開は――」と話題を換えてしまった。

 梅野を打たせたのは勝負師の勘か。10打席連続凡退で打率1割なら安打が出るころでもある。自ら任命した正捕手への期待、あるいは信頼か。

 梅野はリード面でも5回裏2死一、三塁で初球の外角直球を要求し細川成也に逆転二塁打を浴びた。梅野自身は「オレの責任」と話したそうだ。

 違う、と岡田は言いたいのだ。梅野への質問をはぐらかしたのは「戦犯をつくらない」という信条に基づいている。「負ける原因はあるが、1人に責任を負わせたらあかん」と何度も聞いた。オリックス監督時代の2010年に出した著書『動くが負け』(幻冬舎新書)にも<全員に責任が分散されている方が望ましい><1人に責任を負わせていたら、健全なチームになれない>とある。

 岡田は長いシーズンを見渡し、チームの骨格を整えようとしている。梅野にはつらい敗戦だが、岡田は責任はすべて負う覚悟でいる。=敬称略=(編集委員)

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2023年4月24日のニュース