落合博満氏 監督デビューの04年開幕投手指名の川崎へ示した厳しさと愛情

[ 2022年12月21日 17:05 ]

落合博満氏
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 現役時代に3冠王を3度獲得し、監督としては中日を4度のリーグ優勝に導いた落合博満氏(69)が21日、自身のYouTube「落合博満のオレ流チャンネル」を更新。中日監督就任1年目の04年の開幕戦について振り返った。

 4月2日の開幕・広島戦(ナゴヤドーム)が落合監督にとって、公式戦初采配となった。周囲を驚かせたのが、開幕投手に川崎憲次郎投手を起用したことだった。痛み止めの飲み薬と座薬を併用して1274日ぶりの1軍マウンドに開幕投手として立った川崎は、1回1/3で5安打5失点でKOされた。それでもチームは0―5から打線が奮起して8―6で勝利した。

 「ある意味、引退試合ですよ。“ここで投げられなかったら、もうお前は終わりだよ”っていう。だから“良ければまた投げさせるからな”っていうようなことでね」と落合氏。川崎は開幕投手後、再調整となったが、4月30日の横浜(現DeNA)戦(ナゴヤドーム)で2度目の登板。この試合は打者4人に対し3安打1四球で降板となった。「シーズンの途中で優勝争ってる時に投げさせなきゃいけないっていうようなことはできないなっていう。だったら開幕にもってくるのが一番良いだろうなっていう結論ですよ。だから“開幕投手イコール引退試合”みたいな位置付け。“お前、今年これがダメだったら最後なんだよ”っていうような位置付けで投げさせたっていうのが本音」と監督としての厳しさをのぞかせた。

 ただ、厳しいだけではない。川崎の背中を押す意味もあった。「まして、故障で3年間投げていないっていうことは、人間またどっかで故障したらダメなんじゃないのかなっていうんで踏ん切りがつかないっていう部分が多いんでね。それをとっぱらうためにも、“ここがお前が投げる最高の場所だよ”っていうとこを用意した」と落合氏。長く戦列を離れた選手は、ちょっとした違和感にも敏感になり、新たな故障を怖がって、リハビリの強度をあげられなくなることもある。落合氏にとって、川崎にその1歩を踏み出させる意味合いもあった。

 10月1日に就任1年目でリーグ優勝を遂げた落合監督は、すぐに川崎に戦力外の方針を伝えた。落合監督は同月3日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)で川崎を先発マウンドに送った。ヤクルト若松勉監督の計らいもあって、1番に入った古田敦也、2番宮本慎也、3番岩村明憲と対戦し3者三振。試合中にもかかわらず両チームナインの手で5度宙に舞った。当時、落合監督は「川崎のひたむきな姿を見て今年の優勝があったようなもの。練習をすればグラウンドに立てるということを証明してチームに勇気を与えてくれた。大きな存在だった。あれだけのピッチャーだからこれだけの舞台が必要だった。誰でもやってやれるわけじゃない。長いことありがとうと言いたい」と話した。

 奇策とも言われた開幕投手を含めて3試合の登板だったが、リーグ優勝に誰一人欠かせなかった。動画の中で落合氏は「だから、ちゃんとその役目は果たしたと思うよ」と優しい口調で語った。

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