阪神 岡田監督も矢野前監督も佐藤輝を危惧…でも裏返せば「のびしろしかないわ」ってこと?

[ 2022年11月13日 12:01 ]

12日、ランチ特打の佐藤輝を見守る岡田監督(撮影・岸 良祐) 
Photo By スポニチ

 阪神・岡田監督の発言はストレートだ。物事の本質をズバっと突くことが多い。12日、高知県安芸市での秋季キャンプに合流した佐藤輝について、技術以前の問題とばかりに、「やっぱり練習できなあかんよ、そういうことやろ」と痛烈なダメ出しをした。

 打撃フォームの改造を予告していたが、心も体もできあがっていないと見て、アドバイスすらしない“放置プレー”。認めていたはずの三塁の守備さえも、「シートノックをしてても動きが目立つやろ」と、切り捨てた。

 確かに、佐藤輝の動きは悪かった。打撃は力強さに欠けた。

 だが、これには理由がある。

 日本代表で、ヤクルト村上、巨人・岡本和らの練習方法を見て学んだ「逆方向へ運ぶ」という感覚をテスト。試しながらゆえ、持ち味の破壊力が影を潜めた。

 日本代表の強化試合に参加していたため、体が実戦仕様だったこともマイナスに働いた。猛練習に慣れていない状態で、いきなり20分×2本のランチ特打を課され、最高気温23度まで上がった安芸市の強い日差しを浴びれば、干上がるのも当然だった。

 ただし、岡田監督の「中野は体が強いやんか」という意見はごもっとも。同じ「侍組」の中野が他の選手と差がない動きをした一方、佐藤輝は疲労が見て取れるように、軽く振る場面が多かった。悪く言えば、うまく力をセーブして打っていたように見えた。隣のケージで、1球もムダにしないように打ち込む大山と比べても、対照的だった。

 前政権の矢野監督と井上ヘッドコーチが鍛えていなかったといえば、決してそんなことはない。こだわりが強い佐藤輝の力を伸ばすために、故障しないように、厳しく当たって自分の殻に閉じこもってしまわないように、コミュニケーションを取りながら、丁寧に根気強く育てた。

 矢野監督は今季の後半戦、1度、中野とともに佐藤輝を食事に招いたことがあった。そこで伝えたのは、「意味のない練習など一つもない」ということ。グーグルで検索をすれば多くの答えが出る時代だが、最短距離でうまくなる方法などあるわけがない。千本ノックにしても連続ティー打撃にしても、米大リーグの知識がある佐藤輝にしてみれば、納得しかねるメニューかもしれないが、「そこに意味を持たせるかどうかは自分次第」と訴えた。

 佐藤輝は、矢野前監督の“ラストメッセージ”をどう受け止めただろうか。ノック開始時間に遅れ、大山、木浪ら先輩を待たせ、それでいて、愛されキャラゆえに許されているところを見ると、答えが出るのはまだ先なのかなと感じてしまう。

 いずれにせよ、原石に近い状態で、左打者として日本プロ野球史上初めて新人から2年連続で20本塁打以上を打ったことは事実。それも、浜風が吹くため左打者が不利の甲子園を本拠地とするチームで成し遂げたことは、賞賛に値する。

 飛距離に誰もが惚れ込み、磨けばとんでもない可能性を秘めていることもみんな分かっている。プロの練習を完璧にこなすようになれば、どこまで力を付けるのか。岡田監督の厳しい言葉も、裏返せば、「Creepy Nuts」の名曲の名フレーズ、「のびしろしかないわ」なのだ。(倉世古 洋平)

続きを表示

2022年11月13日のニュース