「神整備」阪神園芸に初の女性グラウンドキーパー誕生 甲子園デビューにフリーアナ・市川いずみ氏が迫る

[ 2022年8月1日 07:00 ]

阪神園芸初の女性グラウンドキーパー・石躍奈々さん
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 甲子園球場のグラウンド整備を担当し「神整備」で知られる阪神園芸に史上初めて女性グラウンドキーパーが誕生した。入社2年目の石躍奈々さん(23)で、2日に甲子園で行われる全国高校女子硬式野球選手権大会決勝で“聖地デビュー”を予定。スポニチの高校野球コラム「いっちーの届け夏エール」でおなじみのフリーアナウンサー・市川いずみ氏が、女性整備士に迫った。

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 昨年の入社早々、石躍さんは、甲子園球場のグラウンドキーパーの責任者を務める甲子園施設部長の金沢健児氏に会うと「どうしたら(甲子園で)グラウンド整備ができますか?」と尋ねた。

 兵庫県西宮市出身で「聖地」は身近な存在。小、中学時代は同球場で連合体育大会が開催され、グラウンド整備する会社として当時から阪神園芸を知っていたという。一方で、自身は小学時代から一貫してサッカー女子で野球とは無縁。中学時代にはC大阪堺レディースのGKとして全国大会3位も経験したが、武庫川女子大1年時に頸椎(けいつい)損傷した影響で本格的なプレーを断念した。

 その後に芽生えた思いは「(裏方として)スポーツを支えたい」――。大学のサッカー場は土のグラウンドで「ボコボコしているのが気になっていて整備に興味がありました」と振り返り、阪神園芸に進む要因となった。

 「女性だからできないという時代でもない。何より熱意を感じた」という金沢氏に認められたが、仕事の多くは手作業で切り傷もでき、体力も求められる。元甲子園球児の男性社員でも日々トレーニングが必要といい「1日に体重が2キロ減ったこともあった」という石躍さんもトレーニングジムに通う。入社当初は機械用の軽油の缶を運べなかったが、今では両手で2つを持ち運べるまでに力もついた。

 整備技術は各地の高校のグラウンドや地方球場で1年間勤務して向上に努めた。「選手が走る際に土がどこに飛ぶかをみて土を引いたり戻したりする。選手がどこに立って、どこが掘れているのか。そこから勉強でした」。また、「風の強い日はゆっくりラインを引く」と身ぶり手ぶりを交えて話す両手にはマメの跡が残る。

 2日には、いよいよ甲子園デビューを果たす。「楽しみ」といい、こう続けた。「今は野球(や他の競技)をやっているけど、次は支える立場になりたいと思っている(女性の)方がいるなら……。女性でもこういう仕事ができるというのを見ていただければと思う」。また一つ、女性が甲子園を目指す“場所”が増えた。

 ◇石躍 奈々(いしおどり・なな)1999年(平11年)3月1日生まれ、兵庫県西宮市出身の23歳。南甲子園小1年からサッカーを始める。鳴尾中時代はC大阪堺レディースでプレーし大阪学芸、武庫川女子大でも女子サッカー部に所属。21年に阪神園芸に入社。スポーツ施設本部スポーツ施設部に所属。

 《広島でも球団史上初の女性キーパー誕生》女性グラウンドキーパーでは18年3月末に65歳で退職するまで14年間、札幌ドームで務めた工藤悦子さんがいる。広島では今年4月に入社し球団史上初となった長村香澄さんがマツダスタジアムでグラウンド整備を行っている。

 ◇市川 いずみ 京都府出身のフリーアナウンサー兼ピラティスインストラクター。山口朝日放送時代に高校野球の実況で「ANNアナウンサー賞最優秀新人賞」を受賞。21年からは早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に在学し、野球選手の障害予防について研究中。

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