トヨタ自動車の主将・樺沢 コロナ禍で活動休止も…再確認したチームの“強さ”

[ 2020年10月14日 08:00 ]

トヨタ自動車の樺沢健主将
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 社会人野球のトヨタ自動車が11月22日から東京ドームで開幕する都市対抗野球大会出場を決めた。激戦の東海地区予選を4連勝で勝ち切っての第1代表。本戦出場に大きく貢献した3選手を掲載。最終回は主将を務める樺沢健内野手(31)。

 常勝トヨタ自動車を預かる主将として、これほど誇らしく感じたことはなかった。コロナ禍による3週間の活動自粛などを経て、全体練習を再開した5月11日。樺沢の目に飛び込んできたのは、グラウンドで躍動する仲間の姿だった。

 「ケガを心配したぐらい、けっこう動けているな、と。自分の目でも分かりました。それぐらい、みんなが張り切って練習をしていた。キャプテンとして頼もしく感じました」

 就任2年目。緊急事態宣言を受け活動休止が決まった際、あえてチームメートに声をかけることはしなかったという。「こういう状況の中、自分で考えてやれない選手は試合に出られない。でも、日本一を狙うチームにあってそんな選手はいないと思ったので」。仲間を信頼する主将がいて、その思いに応える仲間がいる。4年ぶり2度目の優勝という大命題を部員32人が共有できているからこそ、前代未聞の難局を乗り越えることができた。

 「活動できない期間が長かったので難しい調整でしたが、一人一人が役割を果たしてくれて勝ちに結びつきました。良い部分が多く出たと思います。ベンチの空気、みんなのかけ声がすごかった。スタメンで出た選手が仕事をしたこともありますが、ベンチの声が本当によく通っていて。チームメートからの声が力となり、出ていた選手は勇気づけられたと思います」

 感謝の思いを体現するかのように、樺沢は打ちまくった。9月18日の三菱重工名古屋戦。初回の中前打で先制機を演出すると、2、6回にはいずれも2点二塁打を放った。同月26日に行われたHonda鈴鹿との第1代表決定戦でも、4打数2安打1打点。「3番三塁」として4試合にフル出場し、14打数6安打5打点で打線を引っ張った。
 
 好調を後押ししてくれたのは、秦健悟打撃コーチだった。元来が実戦を通じて課題をつぶし、技術を向上させていくタイプ。だが、試合数が限られていた今季は、2次予選直前まで、思うような打撃ができなかった。結果を求めれば、力みが生まれるという悪循環。焦りがなかったと言えばウソになるが、秦コーチからの「もっとシンプルに考えたらええやん」という一言が大きなヒントになった。「ボールに対して素直にバットを落とそう」。一切のムダを省いたスイングで、安打を量産した。

 「予選に関して言えば打線がよく点を取ったと思いますが、本戦ではそうはならない。もう一度守備からピッチャー中心に守り勝つ、そういう試合運びをできるように守備の意識を高めていきたい。打てなくても点を取る、粘ることも徹底して。日本一を取るためにずっとやっている。そこにむかって全員で戦っていきます」

 16年の都市対抗、17年の日本選手権はいずれも4番として、優勝に貢献した。東海地区2次予選では4試合で49安打30得点の猛打を見せたが、一発勝負の厳しさを誰よりも知るからこそ一切の油断はない。「常勝軍団」から「名門トヨタ」へ。本戦はその一歩を記すためにある。

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