決死ダイブで梶谷つかんだ1勝 借金チームがファイナルS初白星

[ 2016年10月15日 05:33 ]

セ・リーグCSファイナルS第3戦 ( 2016年10月14日    マツダ )

<広・D>勝利し笑顔の(右から)DeNA・筒香、梶谷、桑原
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 セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ(6試合制)は14日、DeNAが広島を3―0で下し、1勝3敗とした。2試合連続で零敗を喫し、迎えた第3戦。4回にエリアン・エレラ内野手(31)が先制2ランを放って22イニング目で初めて得点を挙げると、5回には左手薬指骨折で強行出場している梶谷隆幸外野手(28)が右前適時打を放って突き放した。勝率5割未満でCSに出場した球団がファイナルSで勝ったのは初。崖っ縁からの逆襲が始まった。

 視界にはボールしか入っていない。3―0の8回2死満塁。梶谷は新井の右翼ファウルゾーンの飛球を必死に追った。追いつけないとみるや、迷うことなく骨折している左手のグラブを突き出してダイブ。フェンスに激突しながら捕球した。

 「痛みのことなんて忘れていました。突っ込んだらフェンスがあった。ボールしか見てなかった。折れてるんだから、次に折れてもどうってことないですから」。チームを救うビッグプレー。激痛に顔をしかめながら、自分では外せない血のにじむグラブをチームメートに外してもらった。

 バットでも根性を見せた。4回にエリアンが先制2ラン。ファイナルS3試合目、計22イニング目で得点が生まれ、続く5回だった。2死三塁。目の前で4番の筒香が敬遠された。気合を入れた。内角低めのカットボールを「両手」で右前へはじき返した。左手にはインパクトの衝撃で激痛が走ったが、それにも増して打点がうれしかった。

 ラミレス監督の信頼に攻守で応えた。10日の巨人とのCSファーストSで死球を受けて左手薬指を骨折したが、初戦から強行出場を続ける。直訴された指揮官は言う。

 「僕も現役時代に阪神戦で榎田に右足に死球を受けて骨折したことがあった。それでも出続けたんだ。カジが“大丈夫。出られる”と言ってきた。それ以上、何も聞く必要はない」

 初戦と第2戦はバットを握ると、左手が離れていた。それでも、右手一本で初戦は2安打を放った。引き分けでも敗退が決まる崖っ縁の状況。この日の試合前に打撃練習を終えると、指揮官に約束した。「練習では軽く打ちますが、試合ではちゃんとやります」と。5回の場面。「何とか(左手が)ついてきてくれた」と振り返った。

 やれることは全部やった。10日に骨折すると試合中に病院へ急行。腫れ上がる患部に注射針を入れて血を抜いた。翌11日に広島の宿舎に入ると、2年間、大事に使い続けたグラブにハサミを入れた。痛みを和らげるために薬指と小指をテーピングで固定。指が入らないため、革をくりぬいた。

 「生きるか死ぬかの一戦」と位置付けたラミレス監督。その言葉を体現するような梶谷の決死のプレーに「彼のおかげでこういったゲームになった」と賛辞を贈った。ヒーローは「死にかけです」と言いつつ、こう続けた。「まだ終わりたくない。4連勝しかない」。熱い言葉で締め、帰りのバスへと乗り込んだ。(中村 文香)

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