東芝3年ぶり頂点!藤田11年ぶりの決勝完封!

[ 2010年9月8日 06:00 ]

<東芝・JR九州>優勝を決め歓喜する東芝・藤田(中央)

 第81回都市対抗野球大会最終日は7日、東京ドームで東芝(川崎市)とJR九州(北九州市)の決勝が行われた。東芝の6年目右腕、藤田卓史投手(27)が3安打無四球、二塁を踏ませない好投で完封勝利。2―0で勝ち、チームは3年ぶり7度目の優勝を果たした。今大会3勝を挙げた藤田投手は、大会のMVPにあたる橋戸賞を獲得した。一方、JR九州は、前身の門司鉄道局時代の1936年以来74年ぶりの優勝を逃した。

【試合結果
表彰選手


  打球が落ちてくるのを待っていられなかった。遊撃の安達が落下地点に入るより先に、藤田はもう両手を突き上げていた。そして泣いた。
 「自分の力を出すことができました。こういう舞台で投げられて幸せです。5年間は無駄ではなかった」。都市対抗の決勝では99年の東芝・須田以来11年ぶりとなる完封勝利。大会3勝目で文句なしの橋戸賞受賞だ。
 ピンチらしいピンチは1度もなかった。先頭打者の出塁を許さず、散発の3安打で無四球。「すべての球のコントロールが良かった」。140キロ台の直球にスライダー、シュートを駆使。16個もの飛球アウトを奪い、二塁さえ踏ませなかった。右横手から繰り出す直球の切れは、最後まで衰えることはなかった。
 九州共立大から入社6年目。昨年まで目立った実績はなかった。転機は昨年の都市対抗だ。チームは8強進出も、後輩が次々にマウンドに上がる中で藤田には最後まで声がかからなかった。直前のオープン戦で好投して自分なりに手応えを感じていただけに大会直後、泣きながら監督室をノックした。「なんで投げさせてくれないんですか」。印出監督から返ってきた答えは「信頼がないからだ。悔しかったら信頼される投手になれ」。
 それから藤田の目の色が変わった。「ああ言った以上は責任がありますから」。積極的に練習に取り組み、下半身を強化したことで球持ちがよくなり、リリースポイントが打者寄りになった。予選で好投。そして初めて上がった東京ドームのマウンドで3戦で2完封を含む3勝。印出監督は「あの舞台であれだけの投球をするのですから脱帽です」。涙の直訴から1年。指揮官の信頼を勝ち取った藤田はガッチリ握手を交わした。
 5年間の不遇時代。心の支えは元南海で活躍した父・学さんからの一言だった。「一生懸命やってればいいことあるぞ」。橋戸賞のトロフィーを抱いた瞬間、その言葉がウソではなかったことを実感した。
 ◆藤田 卓史(ふじた・たかし)1982年(昭57)11月21日、大阪生まれの27歳。沖学園―九州共立大を経て入社6年目。昨年はプロ入りした増井(日本ハム)やベテラン木戸らの陰に隠れたが、今年の都市対抗予選は4試合に登板するなどエースとしてフル回転した。父は元南海投手の藤田学。1メートル82、70キロ。右投げ右打ち。

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2010年9月8日のニュース