背番号「10」狩野 誇りの1回1/3

[ 2010年8月15日 06:00 ]

<前橋商・北大津>8回表、中曽根(左)と交代してマウンドを降りる前橋商・狩野

 【夏の1ページ 前橋商3-9北大津】エースにはなれなかった。でも、働きではエースに負けない。甲子園のマウンドに別れを告げた前橋商の背番号10、狩野は「最高の宝物」をその手につかんでいた。

 「楽しめました。頑張ってきた自分に何かこみ上げるものがある」

 常にエース野口が先にいた。中学時代、ボーイズリーグで活躍した野口に対し、狩野は軟式野球の榛東中で地区大会で敗退。でも、同じ左腕に負けたくなかった。1年の冬には右ひざの半月板を削る手術。つらいリハビリで再起し、今年4月には前橋との県内リーグ戦でノーヒットノーラン。しかし、野口を超えられない。今夏の群馬大会直前の練習試合で打たれ、富岡監督から「おまえには責任感がないのか」と一喝されて目が覚めた。

 マウンドでなくともチームに貢献できる。背番号10には10番としての仕事がある。ベンチでは野口に飲料水とタオルを用意。「野口が後ろ(リリーフ)の心配をしないように」と万全の調整をしてきた。そんな狩野の出番は野口が連打された7回途中から。1回1/3を2失点だった。「ここで投げられたことを誇りに思う。胸を張って群馬に帰りたい」。“もう1人のエース”はさわやかな笑顔で去っていった。

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2010年8月15日のニュース