WBCもう一つの戦い 岩田「あきらめなければできる」

[ 2009年3月7日 07:18 ]

松坂(左)、杉内(中)と一緒にランニングをする岩田

 WBC「侍ジャパン」に、相手チームだけでなく、1型糖尿病とも闘う左投手がいる。阪神タイガースの岩田稔選手(25)。今も1日4回のインスリン注射を続ける。全国の1型糖尿病患者は推定5万―10万人。「あきらめずに頑張れば何でもできる」。7日夜は第2戦。同じ病気を抱える子どもらをマウンドでのプレーで励ますつもりだ。

 大阪桐蔭高校の野球部時代、ウイルス感染がもとで1型糖尿病を発症。1型は、肥満など生活習慣が原因の「2型糖尿病」とは違い、インスリン注射で普通の生活を送ることができるが、完治できる治療法はまだない。
 社会人野球チームから採用を断られ野球をやめようと思ったが、家族や友人の支えで関西大に進学。2005年、阪神に入団。昨年、初勝利を挙げ十勝した。178センチ、85キロ。最速150キロの直球とカーブが武器。投手の球数制限があるWBCでは“生命線”とされるリリーフを担う。
 1型糖尿病の研究を助成する基金を設立している患者団体「日本IDDMネットワーク」(事務局・佐賀市)。昨年12月、患者の子どもたちを集めて名古屋市で開いたクリスマス会に岩田投手の姿があった。この日は自身の闘病体験を交え、子どもたちの質問に一つ一つ答えた。
 シーズン中、患者の子どもたちを甲子園に招いたこともある岩田投手。以前から親交があったネットワークの井上龍夫理事長(56)に「子どもたちのために何かしたい」と常々語っていた。今春、自主トレ中の沖縄県で「シーズン中、1勝するごとに10万円を寄付したい」と表明した。今シーズンの目標は15勝だ。
 「1型糖尿病の選手でもこれだけ活躍できる、と世界にアピールしてほしい」。井上さんは登板を心待ちにしている。

 ◆1型糖尿病 IDDM、インスリン依存型糖尿病とも言われ、自己免疫によって起こる。血糖を下げる作用を持つ必須ホルモンであるインスリンを体内で作れなくなってしまう病気。現在、完治のための効果的な治療法はなく、生涯にわたり血糖測定をしながら毎日数回のインスリン自己注射またはポンプによるインスリン注入を続けることが必要。糖尿病患者の99%を占める2型(成人型)とは原因も治療法の考え方も異なる。1988―89年、巨人で計21勝を上げたガリクソン投手も1型だった。

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2009年3月7日のニュース