東京ラブストーリー「25年後」 柴門ふみ氏が“その後”に込めたメッセージ

[ 2017年1月23日 08:00 ]

「東京ラブストーリー After 25years」(C)柴門ふみ/小学館
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 1990年代を代表する恋愛漫画「東京ラブストーリー」の新刊が12日に26年ぶりに発売され、アラフィフ読者を中心に反響を呼んでいる。「東京ラブストーリー After 25years」(小学館)で、50歳になったカンチとリカらの物語。作者・柴門ふみさんが大ヒット漫画の“その後”に込めたメッセージを聞いた。

 ――「東京ラブストーリー」の25年後を描いた物語が単行本が12日に発売され、「あの頃が懐かしい」「カンチが自分に思えてくる」などの共感の声が上がっている。「ドラマをこの新刊で撮ってほしい」と織田裕二(49)と鈴木保奈美(50)で大ヒット作の復活を期待するファンもいる。女性セブン(小学館)での連載は、昨年末に終了した。

 「描きたいテーマは描き切った。それは恋愛がさまざまな形の愛に変わることです。恋愛は、別れか結婚で必ず終わる。でも恋愛の終わった時間の中でも人は生き、別の愛で支えられていく」

 ――登場人物それぞれのその後は、どれも25年の重みがあって切ない。だが温かい気持ちにもなる。

 「カンチとさとみの関係は、夫婦や家族という別の形になった。シングルマザーのリカは、息子との愛に支えられた25年。三上と尚子は支え合うことができず、残念ながら離婚を選んだ。そういうこともある」

 ――79年に漫画家デビュー。主に男性向け青年コミック誌で描いてきた。

 「女性読者からは恋愛の心理描写が“リアルすぎる”との声もある。恋愛のファンタジーだけを楽しみたい人には、見たくない部分が描かれているのかも」

 ――東京ラブストーリーは漫画家生活10年目に発表した作品。ラストシーンまでストーリーを組み立てて描く緻密な戦略が、大ヒットにつながった。

 「それまで私が取りこぼしてきたファンを取り込もうと、男女どちらの読者にも受け入れられる漫画を目指した。対極のキャラクターの男女数人を配して、読者が誰かに感情移入できるようにした。例えば恋愛上手な三上は男に嫌われるけど、女は好きなタイプ。リカは女受けがいいけど、男に嫌われる。でも、さとみは違う。三上が嫌いな男は、優柔不断で不器用なカンチが好きな傾向がある」

 ――計算通りの大ヒット。いや実は“誤算”もあった。だが、それがあの名セリフを生んだ。

 「描き始めると、展開が予想より遅くなり、カンチとリカは1巻で恋人になる予定なのに、全然そうならない。とにかく展開を急がなきゃと、リカに言わせたセリフが“セックスしよ!”でした。こういう誤算が楽しい」

――もう「東京ラブストーリー」を描くことはない

 「三上と尚子は、リアルに描こうとすると単行本1冊は必要なので省略した。リカとアフリカ(息子)の25年も描きたい気がなくはない。また何か機会があれば…」

――漫画家生活38年。恋愛を描き続ける理由は? 

 「恋愛すると人間の本性が出て面白い。完璧な奥さんがいるのに不倫する男、聡明で立派なのに男に貢ぐ女…恋愛に人間の不思議が出る」?

 ――私生活では、19日に60歳になった。2011年、乳がんが見つかった。?

 「幸いごく初期の段階で、昨年ホルモン治療を終えたところです。60歳になり、寿命を意識するようになった。今、1作1作を遺作のつもりで描いている」

 ――今月から不倫が題材の新作「恋する女たち」が女性セブンでスタートした。

 「このところ話題になることが多いテーマですが、それはみんなすごく興味があるから。そして不倫も恋愛のひとつの形。10年温めた題材なのでぜひ読んで下さい」?

 ――恋愛の美しさだけでなく、愚かさや怖さも描いてきた柴門さん。そのペンはますます研ぎ澄まされていくようだ。?

 ▽東京ラブストーリー 88〜90年、週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載。東京の広告代理店で働く完治は、同僚で自由奔放なリカに振り回されながらも恋に落ちる。幼なじみ三上、高校の同級生さとみとの三角関係も絡み合い、複雑な恋模様が展開。昨年1月、スピリッツで読み切りを発表。11月から女性セブンで連載再開。昨年末に完結、単行本1巻発売。

 ◆柴門ふみ(さいもん・ふみ)1957年(昭32)1月19日、徳島県生まれ。お茶の水女子大在学中に同人誌で描き始める。1979年「クモ男フンばる!」でデビュー。「女ともだち」「P.S.元気です、俊平」「あすなろ白書」「同・級・生」「Age,35」などヒット作、ドラマ化作品多数。夫は漫画家の弘兼憲史氏。現在、女性セブンで「恋する母たち」を連載中。

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