選抜出場の社 自分で考え、創造し、動く野球で「頂点」目指す 大会3日目に海星と初戦

[ 2023年3月17日 19:10 ]

隈主将(左から4人目)らナインと対話する社・山本巧監督(右)(撮影・長嶋 久樹)
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 第95回選抜高校野球大会は18日、阪神甲子園球場で開幕する。19年ぶり2度目の出場となる社(兵庫)は大会3日目(20日)の第1試合で、海星(長崎)と激突。初出場でベスト4に進んだ前回を超える快進撃を狙う。「私学上位」が明確な高校球界で、「公立の雄」が示す存在感をスポニチチャンネルの動画とともに紹介する。 社高校の動画はこちら

 社の練習メニューは、個人でこなす時間が圧倒的に長い。一人一人の肉体、能力、考え方が違うように、取り組むべき課題も千差万別。自分の現在地を確かめ、強化ポイントをあぶり出し、目標に向かって進む。個々のテーマに取り組んだ後に実施される全体の守備練習、状況に応じたシート打撃も、ただ漫然とこなすわけではない。鋭い視線を光らせる山本巧監督がストップをかけると、全員がホームベース付近に集合。最適な「答え」を模索するための作業は果てしなく続く。

 「僕たちは考える野球を売りにしているので、そこは突き詰めていかないと私学には勝てない。150キロを超えるボールを投げる投手や、100メートル以上の大きな当たりを飛ばす選手はこのチームにいないので、足を絡めたり、バントを使ったりして、少ないチャンスをしっかりもぎ取るための考え方は大事にしている」

 隈翼主将(3年)が簡潔な言葉でチームの方向性を示した。MAX141キロ右腕の高橋大和(3年)も、「社スタイル」を地で行くエースだ。高校入学時、複数の誘いを受けながら、社に進んだのは、「チームの環境が自分で考えてやる野球で、自分の目指すものと同じだった」からだ。チェックする動画は、参考にしたり、採り入れるための投球フォームだけではない。体作りや、必要な栄養摂取に関しても、幅広く知識を蓄え、パフォーマンス向上につなげる。「なりたい選手を追求して考えて、どういう風にやったらできるかとか、考えれば考えるほど楽しい」。昇華された自主性が野球人としてだけでなく、人間としての成長も促しているのは間違いない。

 ただ、山本監督によると、自分で考え、自発的に取り組む作業はファーストステップに過ぎない。「(選手が)主体的に取り組むために、考え方、価値観、手法、メンタルの持ち方も含めて、選手とは相当、打ち合わせをします。(2020年秋に導入した)ブレインストーミングとは、話し合いとか意見交換といった部分で捉えられがちですけど、そういうコミュニケーションの中で生まれた発想や、ひらめきを即練習に落とし込んでいく、というのが本当の狙いです」。超高校級の球児は不在でも、全員が勝利へアプローチする手段を知っている。「YASHIRO」のユニホームが、再び甲子園の大海を躍動する時が来た。

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