【内田雅也の追球】夜長の味わい深い勝利 二塁打攻勢に阪神が目指すべき道が見えた

[ 2022年9月24日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神7―3広島 ( 2022年9月23日    マツダ )

<広・神>4回1死一塁、高寺は右翼線適時二塁打を放つ(撮影・平嶋 理子)
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 誤解なきように前置きするが、何も純血主義を掲げるわけでも、移籍による活性化を否定するわけでもない。ただ、この夜出場した阪神のメンバーは外国人選手を除き生え抜き選手だった。この夜に限らず、今季はずっと同様である。

 ひと昔前、スタメンで生え抜きは鳥谷敬だけ、といった時代を思えば、隔世の感がある。しかも負けられないシーズン終盤の一戦に若い才木浩人が先発登板し、2年目の高寺望夢が先発二塁に入った。若手育成を貫いた監督・矢野燿大の4年間が詰まった試合だった。

 キャンプイン前日に今季限りでの退任を表明した矢野に残された日々はわずかだ。選手たちには監督との別れを惜しむ感情があろう。最後の奮起を見せたいはずだ。

 試合は中4日で3番手で救援し、中盤2イニングを零封した藤浪晋太郎が光る。打線は放った12安打のうち6本が長打だった点に目がいく。

 阪神のチーム打撃成績を見ると、チーム打率はセ・リーグ最低、本塁打は中日に次いで少ない。本塁打が少ないのは甲子園球場、バンテリンドームナゴヤと広い本拠地球場なので分かる。

 問題は二塁打で144本と極端に少ない。リーグ5番目の巨人でも191本、最多はDeNAの211本で阪神だけが取り残されている。長打率も中日より低い・335だ=成績は22日現在=。

 そんなピストル打線だが、この夜は二塁打が得点を演出した。1回表は近本光司右中間、大山悠輔中越えの連続二塁打で2点。原口文仁の2ランで加点した。4回表は1死一塁で高寺がプロ初安打の右翼線二塁打を放ち走者を還した。6回表は原口が二塁打で出て、佐藤輝明が「何とか次の1点を」の思いで内角速球をコンパクトに振り、右越え2ランを呼んだ。

 二塁打について往年の大リーグ・ヤンキースの強打者、ジョー・ディマジオが語っている。「ホームランを打つための練習などしていない。好打者の狙いは常にジャストミートにある。いつも結果としての二塁打を心がけるのだ」。「打撃の神様」巨人・川上哲治が「共感した」と著書『遺言』(文春文庫)に記している。「弾丸ライナー」が代名詞だった。

 二塁打攻勢には、阪神の打者陣が目指すべきヒントがある。秋分を迎え、夜長に味わいたい勝利である。=敬称略=(編集委員)

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2022年9月24日のニュース