【内田雅也の追球】打ちに出る「果敢さ」と見極める「冷静さ」の二段構えがチームの大きな力になる

[ 2022年8月26日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5―0DeNA ( 2022年8月25日    京セラD )

<神・D>1回、内野安打で一塁を駆け抜ける中野(撮影・井垣 忠夫)
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 連敗脱出の阪神にとって1回裏の先取点は大きな意味を持っていた。2試合続けて零敗を喫しており、とにかくまず1点が欲しかった。

 得点は俊足と選球眼が物を言った。中野拓夢が二塁手右(一、二塁間)へのゴロで内野安打で生きた。島田海吏一ゴロで二進し、近本光司の二塁手左(二遊間)ゴロが再び内野安打となって1死一、三塁とした。

 さらに近本初球二盗で1死二、三塁。俊足の1~3番のスピードが生きての好機拡大だった。

 4番・佐藤輝明が課題の胸元速球に差し込まれての三飛に倒れた。外飛(犠飛)でも深く守る内野へのゴロでも1点が入る場面。このまま無得点で終われば、尾を引く痛恨の凡飛だった。

 佐藤輝は3回裏も同じインハイ速球を打ちに出て、今度は大きな右飛だった。苦手とされる、あの球を柵越えしたい。見送るのではなく、打ちに出る果敢さは評価したいが、今は結果はともなっていない。何か工夫が必要なのだろう。

 4番凡退の傷をいやしたのが5、6番だった。2死二、三塁となった1回裏はこの後、大山悠輔、メル・ロハス・ジュニアが続けて四球を選び、押し出しで先取点をもぎ取った。2人とも0ボール―2ストライクと2球で追い込まれながら、DeNA先発フェルナンド・ロメロの速球、変化球を辛抱強く見極めての四球だった。

 いわゆる打席自制心が見える選球は派手さはないが大きな力となる。好機では「自分で還す」という積極思考の果敢さと「好球を打つ(悪球は手を出さない)」という冷静な慎重さの二段構えで臨みたい。佐藤輝に必要な考え方かもしれない。

 初回、たった1点ではあるが20イニングぶりに得点が入ったことで、チームはゼロ行進の重圧から解放されたようだ。

 3回裏は4安打集中で3点を加えた。この4安打のうち3本は初球をとらえたものだった。残る1本も1ストライク後と積極性が目立った。初回の得点で、阪神が掲げる「超積極的」な本来の姿を取り戻したのである。

 この3連戦、一戦ごとに観衆は減ったが、それでもこの夜、観客動員が12球団トップで200万を突破した。京セラドームでの主催、最後の9戦目での初勝利。大阪のファンに届けた白星を糧にしたい。=敬称略=(編集委員)

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2022年8月26日のニュース