女子野球は「未来しかない」(4) 苦節の歴史経て 隣でお茶した地元の人が、自治体職員が…広がるファン

[ 2022年3月4日 08:00 ]

佐賀・嬉野市のPRで茶染め体験した侍ジャパン女子代表と同OGメンバー。講師の先生と記念撮影
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 【3から続く】昨年11月に行われた嬉野でのセッションイベント。翌日には、翌日に阪神タイガースWomenの三浦伊織、水流麻夏、佐賀県出身の元代表選手・緒方佑華さんの3人で嬉野の街に繰り出した。名物などを紹介するYouTubeをロケしながら撮影。市職員も同行し、ご当地クイズなどを織り交ぜ、笑いの絶えない撮影となった。

 まずは温泉街の足湯に始まり、忍者村では忍者の扮装をして手裏剣投げを体験したり、名物の温泉湯どうふを「食レポ」。さらにその後も、肥前吉田焼の工房を訪れ、絵付けを体験。お茶の文化施設「チャオシル」では茶染め体験にも臨んだ。選手たちは一つ一つの体験やレポートを全力で盛り上げ、健気にPRした。

 「チャオシル」では心温まるシーンもあった。うれしの茶やスイーツを「食レポ」している最中、横では地元のご夫人方がお茶をたしなんでいた。明るく元気にレポートしている姿を見て、「あの子たちは誰?」と聞く。女子野球の日本代表だと告げると、「へえ!そうなんだ。すごいわね」と興味津々。さらに、施設で働く人からも「日本代表の方たちなんですか。せっかくお会いできたので、これも縁。記事や情報を見てみます」と声が挙がるなど、地道な活動は着実にファンを根付かせている。地域住民との交流が生まれ、市職員は「こういう取り組みがやりたかったんです」と感無量の面持ちを浮かべた。

 代表クラスの選手や監督がこうした地方のイベントに出ていくのは、男子ではあまり見られない光景だ。しかし、女子は積極的に足を運んでいく。それは、これまでの苦節の歴史があったからだ。

 資金がない上に、公営球場を借りようとすれば、優先順位はいつも一番最後。プレーする場所を確保し、環境を整備するために必死になってきた過去がある。だからこそ「行政を巻き込むしかなかった」と、連盟の山田代表理事は言う。それでも、地道に行政へプレゼンを重ね、自治体内でもファンを開拓した。

 そこへ、時代の追い風も吹いた。女性活躍推進や多様性を受け入れようという観点から、女子野球でまちおこしをしようとする自治体が増え、スポットライトが当たったのだ。今や、女子野球を開催したいとローカル大会の誘致も争奪戦になるほど勢いが増してきている。

 いつか、女子が球界の主流となる日が来るのではないか。そう予感させられるほど、女子野球の世界は可能性に満ちている。(完)

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